小学生のひと夏の思い出。 ★★★☆
「サバ缶を見ると思い出す少年がいる…」という、売れない作家の久田(草彅剛)のナレーションで映画は始まる。
そして小学5年生だった久田少年が、学校では仲間はずれだった竹本君と一緒に過ごした夏休みの思い出が語られる。
時代は昭和50~60年ぐらいか。
長崎に住む久田少年は、ちょっと情け無いけれども本質的なことをしっかりと見てくれる父親(竹原ピストル)と、すぐに頭をはたくけれども気の好い母親(尾野真千子)、弟の4人暮らし。
それほど裕福ではないけれど、愛情いっぱいの家庭。
そんな久田少年はある日、ふいに竹本君に一緒にイルカを見に行こうと誘われる。
竹本君は貧しい身なりや、古い家などからみんなから馬鹿にされていた少年。
しかし彼は毅然とした態度をとり続ける強い少年だったのだ。
彼はある理由で(この理由もよかった)冒険旅行の相棒に久田少年を選び、一緒にブーメラン島へイルカを見に行こうと誘う。
二人は一台の自転車で、峠を越えた先の海岸の沖合の島をめざす。
峠の坂では自転車が壊れ、不良にも絡まれ、さらに島まで泳ぐうちに足も痙り・・・。
少年たちの一大冒険旅行である。
途中で助けてくれたお姉さんやお兄さんは、二人には女神やヒーローのように思えたことだろう。
みんな優しかったのだ。
冒険旅行の別れ際に久田少年がお姉さんに名前を聞く。お姉さんは「ユカよ」と教えてくれる。そして言う、
「それにしても、君ってホントにおっぱいが好きだね」(笑)
久田少年はお姉さんの濡れたTシャツの胸ばかり見ていたのだ。正直なところ、お姉さんはかなり貧乳だったのだけれど(汗)。
照れる久田少年。小学生の男の子って、こうなのだろうなあ。
主人公の二人を演じた子役は好かった。
特に久田少年の少し情けない顔つきは何とも味があった。
それからの夏休みの毎日、久田少年と竹本君は一緒に遊びまくる。
二人の一日の終わりの言葉はいつも、「さよなら」ではなくて「またね~」だった。
また会うはずの「またね~」だったのだが、ある事件が起きて、夏休みの終わりを待たずに二人に別れがやってきてしまう。
竹本君が遠くへ引っ越していく日、動きだした電車に向かって久田少年が「またね~」と叫ぶ、竹本君も「またね~」と叫び返す。二人は電車が見えなくなるまで「またね~」と叫び合う。
年甲斐もなく目頭が熱くなる場面だった。
エンドロールのあとで、冒険旅行の日に竹本君が岸壁に描いていた落書きをお姉さんが見つける場面が映る。
観ている者も、一体あのとき何の絵を描いていたのだろうと気になっていたわけだが、最後にこの絵を映してみせる。
好いエンディングだった。
ひと夏の少年の冒険ものと言えば、あの「スタンド・バイ・ミー」を思いうかべるが、日本の昭和時代を背景にしているだけにこの映画の方が思い入れをしやすかった。
飾らない二人の少年の素のような演技が何とも素晴らしかった。甘酸っぱい、誰もが自分のことのような感覚を味わえる思い出を描いていた。
タイトルの「サバカン」も(ポスターも)印象的な映画。
サバカン? 映画の中でどんな風に出てくる? それは観てのお楽しみですよ。
元・嵐の二宮君の映画に続いて草薙君の映画を観たわけだが、映画としてはこちらの方が上だったな。