あきりんの映画生活

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「ジョジョ・ラビット」 (2019年)

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2019年 ドイツ 109分
監督:タイカ・ワイティティ
出演:ローマン・グリフィン・デイヴィス、 スカーレット・ヨハンソン、 サッム・ロックウェル

ナチス・ドイツ下の少年もの。 ★★★☆

 

ひと言では分類の難しい映画。
根底に反戦の気持ちがあるのは確かなのだが、表だって反戦映画だと主張しているわけではない。
戦時下に無辜な少年が置かれると言うことの意味の大変さを描きながら、ユーモア感覚もちゃんとある。

 

主人公のジョジョは10歳のナチズムを信奉する少年。
常に子ども用の軍服を着ていて、挫けそうになったときには心の中にいるヒトラー総統があらわれて(監督のタイカ・ワイティティが演じている)叱咤激励してくれる。
母ロージー(スカーレット・ジョハンソン)は社会的に活発に活動しているようなのだが、そんなジョジョを優しく見守ってくれている。

 

純粋な心を保っている少年少女にとって、教育と称して教え込まれることがどれだけ大きな部分を占めてしまうことか。
ジョジョも、何の疑いもなくヒトラー総統に忠誠を誓うことが絶対的なことだと思い込んでいる。
教育は怖ろしい。その国の若者の思考を左右してしまう。
日本のすぐ近くの国でも、幼い頃から反日教育をされて育った若者がいるようなのだが。

 

親衛隊になることを夢見るジョジョは、キャプテン・K(サム・ロックウェル)が開くナチ青少年団合宿に参加する。
そこで、人を殺すには兎を殺す勇気がいる、と命令されるものの、ジョジョは兎を逃がしてやってしまう。
タイトルの「ジョジョ・ラビット」は、仲間達がそんなジョジョのことを意気地なしだと笑って付けたあだ名。

 

訓練で怪我をしたジョジョは自宅で養生しているうちに、母が匿っているユダヤ人の少女エルサ(トマシン・マッケンジー)と出会ってしまう。
そうなのだ、母はレジスタンスだったのだ。ヨハンソン、格好いい。

 

ジョジョの心は千々に乱れる。
そりゃそうだ。ジョジョにとってはナチの教えは絶対だったのだから。それなのに自分の家にユダヤ人が隠れていた! どうすればいいのだ?
エルサに脅されたり説得されたりして、結局ジョジョはエルサを隠し通すことにする。

 

そうしているうちに、母とエルサの二人の影響で、ジョジョの中のこれまでのヒトラー信奉が微妙に変化してくるのだ。
少年のことだからそれは理屈によってではない、もっと感覚的なものなのだ。
大人だったら気づけないような感覚的なもので、純粋な心の少年は変われるのだ。

 

不意にゲシュタポが家捜しに来る場面がある。
エルサのことを姉だとゲシュタポに嘘をついて、なんとかやりすごそうとする。
ここでジョジョがかってはヒトラー信奉者であったことが功を奏する。
騙されるゲシュタポが愚かに描かれていて、緊迫しながらも、ユーモアもある場面だった。

 

そう、この映画はナチスの大真面目な支配があまりにも理不尽であることを描いて、それがかえってユーモアにつながるようにしている。
そこが巧みだった。

 

辛い場面もある。
絞首刑にされた反逆者は、見せしめのために街の広場で吊されて晒される。
ある日、ジョジョはその絞首刑者を見て愕然とする。
この場面では吊されている人の上半身は映らない。ただ腰から下が映り、女物の靴が映る。
ジョジョは、いつも母がしてくれていたようにその靴の紐をきれいに結ぼうとするのだが、涙で上手く結べないのだ。
顔が映されず、ただ靴と、その靴紐を結ぼうとしているジョジョの姿は、悲しみを深く伝えていた。

 

映画の終盤、ついに連合軍が街に攻め込んでくる。
捕まりそうになったジョジョのことを、あのキャプテン・Kが、その子はユダヤ人だと言って庇ってくれる。
そして自分は死んでいく。

 

最後、戦火で崩れ落ちた街中。そんな中で戸口に並んで立つエルサとジョジョ
ナチスから解放された若い二人が、これからの人生を新たにやり始めるのだろうなというエンディングだった。