2018年 日本 106分
監督:武内英樹
出演:GACKT、 二階堂ふみ、 伊勢谷友介
ぶっ飛んだコメディ。 ★★★
噂にたがわず、これは面白かった。
さすがに「パタリロ」の魔夜峰央原作だけのことはある。
あの漫画の主人公のとぼけた風合いも目に浮かぶようで、宝塚歌劇をパロったようなメイクや衣装はいかにも魔夜峰央の画を思い起こさせる。
それに痛快なのは、東京都民がおこなう埼玉県民への差別や苛め。
苛めと言ってもここまで徹底的にやると、陰湿どころか、爽快な気持ちになってしまいそう。
実際に、この映画を観た埼玉県民も自分たちがディすられるのが楽しかったよう。
とにかく東京都民は”上級国民”。
都知事(中尾彬)はもう絶対権力者。その息子の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は、おお、お前はオスカルそのものではないか(笑)。
彼もまた、宝塚の園のような学園で生徒会長として絶対的権力を誇っていた。
二階堂ふみが、埼玉県人には草でも喰わしておけっ!と憎々しげにのたまうところは好い絵柄だった。
とそこへ、アメリカ帰りの麻実麗(GACKT)が転校してくる。
もちろんこちらも宝塚風の衣装の美少年(44歳だけれど 汗)。
このGACKTの起用がこの映画の大きな成功要因だったような気がする。
あの気障っぷりがなんとも映画に合っていた。
百美は当初は麗に対抗心を燃やす。
東京人であることを試すためのテストをおこなうのだが、なんとそれは東京各所の空気鑑定。なんだ、そりゃ。
もちろんこれはGACKTのことなので、あの「芸能人格付けチェック」をパロっていた。面白いなあ。
で、そのうちに百美は麗に恋い焦がれてしまうのだが、実は麗は埼玉解放戦線のメンバーだったのだ。
う~む、ロメオとジュリエット風味も絡んできたか。
二人が追っ手から逃げ隠れたのは池袋。
キッチュな池袋風景にはちゃんと東武と西武の看板が見えていた。好いねえ。
(この映画は、ある程度東京や関東の地理的知識があった方がより楽しめるかも知れない。)
千葉と埼玉は仲が悪い。東京に虐げられた者同士がつぶし合いをしているようなもの。
だから東京はますますつけあがる。これ、権力者が使う常套手段ではある。
埼玉県民は千葉県内を隠れるようにしてしか通行できない。
で、そんな埼玉県民を捕まえるのが、その名も”埼玉ホイホイ”。もちろんゴキブリに見立てている。
餌は何かというと、海のない埼玉県民の憧れの海浜風景。波の音などを餌にして捕まえる。
傑作だなあ。
そんな埼玉と千葉が、ついに川を挟んで対決することになる。
両方の大勢の県民が対峙するのだが、なんとその争いは自県出身の有名人対決なのだ。
俺の件からはこんな有名人が出ているぞっ!
これには笑ってしまった。
埼玉県は一番にYOSHIKIを持って来たのだが、これもやはりあの番組でGACKTの相方だったからかな。
ついには埼玉と千葉は手を組んで東京に攻め入る。もう、お祭り騒ぎである。
(都庁前の道路を埋めつくした俯瞰映像。あれは東京マラソンのスタート時風景を使ったのではないだろうか。)
とにかくこの馬鹿馬鹿しさが素晴らしかった。
埼玉をディスっているようで、実は一番ディスられていたのは東京だったなあ。