あきりんの映画生活

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「ヴィレッジ」 (2023年) この村はゴミ処分場で保たれているんだ

2023年 日本 120分 
監督:藤井道人
出演:横浜流星、 黒木華、 古田新太

閉鎖的な村で。 ★★★

 

映画「新聞記者」で硬派な社会派ドラマを撮った藤井道人監督。
現在公開中の韓国映画のリメイク作「最後まで行く」も、オリジナルを越えているとの評価も得ているようだ。
今作はそんな藤井監督のオリジナル脚本によるもの。

 

片山優(横浜流星)が暮らしているのは寒村の霞門村。
何の産業もなかった村は、その維持のためにゴミの最終処分場建設を受け入れていた。
他所から持ち込まれる大量のゴミを受け入れることによって、村のすべてが成り立っていたのだ。

 

優は、アル中でパチンコ狂いの母親が抱えた借金返済のために処分場で働いている。
同僚からの執拗ないじめの標的となりながら、どこにも行き場のない優は希望のない毎日を送っている。
村は閉鎖社会であり、優も心を閉鎖して生きていたのだ。
このあたりは、観ている方もそのどうしようもない閉塞感に嫌~な気分になっていた(汗)。

 

東京から村へ戻ってきて役場で働くようになった美咲(黒木華)が、ごみ処分場のPR活動を始める。
その広報に協力した優はマスコミからも取材を受けるようになっていく。
美咲とも親しくなっていく優。
面白くないのはそれまで優を苛めてきた村長の不良息子。美咲にも気があるものだから、ことある毎に嫌がらせをしてくる。
なにか状況が好転していくのだが、こんなことがそんなにうまく行くわけがないだろ、と観ている方はこれからの展開に不安を感じていた(汗)。

 

横浜流星はこのところいろいろな映画で活躍している(ドラマにも出ているらしいのだが、TVはほとんど観ないのでそちらには疎い)。
強い意志を感じさせる顔立ちも好いのだが、演技もしっかりしているように思う。
相手役の黒木華は安定の演技。
この人はどんな役でも自然体で演じられるような雰囲気がある。たいしたものだ。

 

さて。処分場には実は大きな隠し事があったのだ。やっぱりね。
優も、母の借金のために、その悪事に荷担させられていたのだ。やっぱりね。
このことが公になったら、やっと希望が持てるようになった優の未来は閉ざされる。
そればかりか、少し大げさに言えば、村自体が存亡の危機にさらされることになる。
どうする? どうなる?

 

閉鎖的な村がそこに暮らす人々を一蓮托生のものとしている。
そして霞門村に古くから伝わる「能」が、要所要所であらわれ、村全体を覆っている不気味さを加速させている。

(この能舞台に並んだ登場人物たちの無表情な様子を見て欲しい)

 

過疎の村に資金投下という餌を与えて、都会生活の後始末をさせるという、今日的な社会問題が背景にある。
しかし、それを声だかに前面に持ってこなかったところが物語を引き締めていた。
この映画はあくまでも閉ざされた村での人間ドラマであり、村対都会といった構図から生まれるドラマではない。

 

ラスト(エンドクレジットのあとだったか)に村を去る若者が映る。
これを希望とみるか、希望のない逃避とみるか。
それは観る人にゆだねられるのだろう。ちなみに私はどこまでも後者だった。