あきりんの映画生活

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「パラサイト」 (2019年)

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2019年 韓国 132分
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、 チョン・ジソ

ブラック・コメディ。 ★★★★

 

カンヌでパルムドール賞、そしてついにアカデミーで作品賞を含む4冠となった。すごい。
観てみると、なるほど、確かにこれは面白い。そして深みもある。
納得の傑作だった。

 

韓国では、かっての防空壕跡を利用した半地下住居は珍しくないらしい。
そして、そうした半地下で暮らすのは下層階級の人々だ。

 

冒頭からその半地下住居で暮らす一家の様子が映される。半地下なので携帯の電波も充分には届かずに大騒ぎをしている。
部屋内で住む人の目の高さに、外の通りを過ぎる人の脚がある。
これは常に他人に蹴飛ばされながら生活しているような感覚ではないだろうか。

 

トイレはなんと高い台の上のようなところにある。これは汚水を流すためにはその高さが必要ということなのだろう。
つまり汚水の流れ路よりも低いところで生活しているということだ。

 

物語は、そんな半地下で暮らすギテク一家が、巧みな話術と芝居で、高台の社長パク家に入り込んでいく、というもの。
ひょんなことから先輩の代わりにその社長家の家庭教師になった息子ギウ。
すると次に、妹のギョンを美術の家庭教師として紹介して入り込ませる。
父親キムはお抱え運転手として、そして母親チュンスクは家政婦としてパク家に入り込む。

 

この4人が次々にパク家に入り込んでいく手口が実に面白い。
もちろん、それまでパク家にいた運転手や家政婦を失脚させるためには策を弄するわけだ。
善良なパク家の主人も夫人も、まんまと他人のふりをしたギテク一家に騙されていく。
そもそも、生活に困っていない社長一家の人達は、他人を疑うことを知らないのだ。
そんなことをする必要のない生活をしているのだから。

 

このあたりは韓国の強烈な貧富格差社会を風刺していた。
半地下住居と高台の豪邸。嘘をついてでも生き抜かなければならない下層の人々とそんなこととは無縁に優雅な生活を送る上級の人々。

 

そして半地下生活者のギテク一家がパク家に入り込んでみると、そこには地下生活者が隠れていたのだ。
自分たちよりもさらに低いところで生活している地下生活者。当然、下層階級の人同士の争いも生じてくる。
このあたりからのドタバタ劇から起こる笑いは、どこか陰惨などす黒いものになっていく。

 

嵐のような大雨も半地下一家を襲う。
降りつづく雨は低いところへ、低い方へと流れ、容赦なく半地下の家に流れこむ。
すさまじい有り様となっていく。汚水はトイレから噴き出すのだ。
なんという状態だ。ブラック・コメディなのだが、それにしても凄まじいぞ。

 

好くできたエンタメ映画なのだが、ポン・ジュノ監督なのでちゃんとスプラッターになっていく。やがて積み重ねた嘘や地下生活者同士の争いなどが一気にクライマックスを迎える。
それはパク家の幼い子供の楽しく晴れやかな誕生パーティで起こるのだ。

 

決定的に思えるのは、上級人間であるパク社長が、運転手だった父親キムにいう言葉。好い運転手だったのだが、なんとも身体が臭かった!
半地下での生活から染みついた臭いが、決定的に上級と下級を分けていたのだ。
なんとも象徴的なこの一言で、物語は大円団となっていく。

 

馬力のあるエンターテイメント映画だった。
実際の韓国にあのような貧富格差があるのかどうかは知らないが(かなり誇張はしているのだろうが)、それにしても2時間あまりをあっという間もなく魅せた映画だった。