2020年 アメリカ 109分
監督:ビル・コドン
出演:イアン・マッケラン、 ヘレン・ミレン
老獪な詐欺師物語。 ★★★☆
2人の老獪な(!)名優の顔合わせ。
そしてその2人を見事に活かした脚本も良かったので、満足のいく作品になっていた。
出会い系サイトで知り合うロイ(イアン・マッケラン)とベティ(ヘレン・ミレン)。
片や金持ちを狙うベテランの詐欺師、片や夫を亡くしたばかりの大資産家の未亡人。
狙う奴と、狙われた人。
ベティの財産目当てのロイは、足が不自由なフリをしたりして彼女の家に入り込んでいく。
ロイが仲間と組んで、資産家の金を奪う手口も紹介される。
一緒に儲け話に投資をしようと持ちかけ、自分たちが用意した偽口座に大金を送金させるというもの(だと思う 汗)。
悪い奴なんだよ、ロイは。
しかしベティの前では、はにかんだような演技で彼女に取り入っていく。
ベティの孫が、あいつはなんか怪しいよと忠告しても、いいえ、そんなことはないわ、私の人を見る眼は確かよ。
おいおい、人のよいベティよ。大丈夫か。聡明な孫の忠告を聞いた方が好いのではないのかい。
いいようにロイに騙されていくベティ。
しかし、観ている者は途中からは、ベティも只者ではないのだろうな、ベティが逆にロイを騙しているのではないだろうか、と思っているだろう。
さあ、どうなるかな?
(以下、ネタバレ)
終盤になって、ついにベティが上品なレディの仮面を脱ぎ捨てる。
ベティがもっている大金を騙し取るはずだったロイだったが、逆に彼の大金が次々に騙し取られていく。
そうか、ベティがロイの誘いに乗ったのにはそんな理由があったのか。
このあたりのヘレン・ミレンの変貌ぶりと、自信満々だったイアン・マッケランの凋落ぶりは、さすがの演技というほかはない。
急に哀れな貧相な老人になりはてるロイ。
実は二人が仲良くデートで観に行った映画は「イングロリアス・バスターズ」だった。
ちゃんと伏線が張ってあったんだ。
ツッコミをひとつ。
情報も完璧に集めて、事前準備も周到に整えることのできるベティなら、もっと早くに復讐できたのでは?(汗)
お年寄り二人のコン・ゲームものなので、最近観た「コンフィデンスマン」のような軽いお洒落な詐欺師ものかと勝手に想像していた。
しかし、なんと重く暗い歴史が絡む復讐映画だった。
さすがの老優二人の騙し合いだった。お見事。