2020年 イギリス 119分
監督:サム・メンデス
出演:ジョージ・マッケイ、 ディーン・チャールズ・チャップマン
第一次世界大戦もの。 ★★★
ドイツ軍の後退が始まった1917年の第一次世界大戦の西部戦線が舞台。
イギリス軍の前線部隊は、敗走するドイツ軍を追撃する命令を受けていたのだが、それはドイツ軍の待ち伏せの罠に陥ることだった。
作戦中止を前線部隊に伝えなければならなかったのだが、通信手段は途絶えていた。
そこで若い兵士スコフィールドとブレイクの2人は、翌朝までに作戦中止の命令を届けるよう指令を受ける。
味方の前線兵士1600人の命を無駄にしないために、2人は必死に走る。
物語はただこれだけ。
当時の戦況がどうなっているとか、地理はどうなっているとか、敵味方の配置はどうなっているとか、そんな細かいことはいっさい無用。
ただただ2人の動きをカメラは追っていく。
2人は味方の塹壕の中を走り抜け、そこから出ると英独両軍が対峙している地帯に出る。
そこを突っ切って行かなければならない。
いつ、何処から撃たれるか、判らない。その恐怖。そしてそれを凌駕する使命感。
その緊張感が観ている者にびんびんと伝わってくる。
この映画の宣伝文句としては、全編をワンカットで撮ったかのような映像。
主人公たちを捉える画面は揺れて、切れ目なしに彼らが眺めている光景に続いていく。
たしかに臨場感がすごい。観ている者が戦場の中を進んでいくような気になっててくる。
主役2人はまったく知らない俳優だったが、それがかえって好かった。
普通の一上等兵が、与えられた任務を必死にこなす姿がよりリアルになっていた。
マーク・ストロング、コリン・ファレル、カンバーバッチといった有名どころも出てたのだが、本当に脇役で、物語をさまたげるものではなかった。
退去したドイツ兵が陣地跡にしかけたトラップ、墜落した戦闘機に乗っていた敵兵、そして建物の窓から狙い撃ってくる狙撃兵。
2人は次々に危険に遭遇する。そして1人はついに・・・。
映画は、やっとのことで前線部隊の元にたどり着き、司令官に攻撃中止命令を伝えることができたところで終わっていく。
2時間のドラマだが、緊張感が途切れることはなかった。
まるでウルトラ・マラソンンを完走したような疲労感と満足感であった。
最後に言わずもがなのツッコミをひとつ。
あの時代のインクは水に濡れれば滲んでしまったと思うのだが、命令書が無事だったのはなぜ?(苦笑)