1993年 アメリカ 144分
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:アル・パチーノ、 ショーン・ペン
ギャングの人生。 ★★☆
ブライアン・デ・パルマ監督はいろいろな映画を撮る。
「アンタッチャブル」や「ミッション・インポッシブル」といった正統派大作を撮るかと思えば、「ボディ・ダブル」や「ファム・ファタール」のようなB級の匂いのするエロティック・サスペンスを撮ったりする。
変化に富んでいて、面白い監督。
この映画はカリート(アル・パチーノ)というギャングの後半生を追っている。
プエル・トルコ人という設定なので”マフィア”の定義に入るのかどうかは疑問だが、とにかくカリートは麻薬密売の大物ギャングだった。
そのカリートが、悪徳弁護士クレインフェルド(ショーン・ペン)の手腕で刑務所から出てくるところから映画ははじまる。
5年ぶりに戻ってきたカリートは、もう自分は年老いたという自覚がある。
そして悪の世界からは手を引いて、恋人ゲイルと南の国に移住して暮らす夢を持っている。
そのためにはお金が必要だ。
アル・パチーノは、どこかうら寂しい雰囲気を漂わせた役がよく似合う。
男の哀愁のようなものがにじみ出てくる。
ジョニー・デップと競演した「フェイク」の彼も好かった。
あの映画では、組織へ潜入してきた捜査官を疑うこともせずに我が子のように可愛がり、そして裏切られていく役だった。男の哀愁だぜ。
そんな彼を引き立てているのが、ドラッグ漬けの悪弁護士役のショーン・ペン。
もうどうしようもなく毀れた人間像を演じている。
さすがに性格俳優。上手い。
物語の展開は比較的地味で、しかも暗い。
しかし真面目人間(麻薬密売をしてたのだけれども)のカリートの一生懸命な生き様には惹き込まれる。
自分を騙していた人間を恩人のように思って義理を果たそうとする。
これからの恋人との生活に夢を抱いて、愚鈍に頑張ろうとする。
う~ん、切なくなってくるほどのカリートの生き様。
ラストに向けての電車での逃亡追跡劇。
そして駅のエスカレーターでの銃撃戦。
南の楽園を夢みたカリートの最後に物語は向かっていく。
(この映画は、冒頭にカリートの最後を映していて、そこからの回想という形式になっている。)
渋い男の映画でした。
ヴィゴ・モーテンセンがカリートにやられる脇役で顔を出していました。