あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。1800本余りの映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。

「バシュランギおじさんと、小さな迷子」 (2015年)

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2015年 インド 159分
監督:カビール・カーン
出演:サルマーン・カーン、 ハルシャーリー・マルホートラ、 カリーナ・カプール

善意の人間ドラマ。 ★★★★

 

この映画を観るまでは、インドとパキスタンの間にこれほどの確執があるとは思っていなかった。
印パ戦争についてうっすらと記憶はあったが、そうか、宗教問題が絡んでいたのか。
それは根が深い。どちらも譲らない対立になるな。
そんな2つの国の対立情勢を背景にした人間ドラマ。

 

パキスタンの山村の5歳の女の子のシャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)は、生まれつき話すことができない。
そこで母に連れられてインドのイスラム寺院に願掛けにやってきたのだが、その途中で母とはぐれてしまう。
言葉が話せず、文字も読めない女の子が1人でインドに取り残されてしまう。
どうすればいい?

 

なんといってもシャヒーダーを演じたハルシャーリー・マルホートラが愛らしい。
時々ちょっとお転婆で、純真そのもの。
もう天使といってもいいぐらいの可愛らしさであった。
子どもをダシに使った底の浅い映画は観られたものではないのだが、これはよかった。
どれぐらい好かったかというと、子どもで泣かせる映画ベスト・ワンの「チャンプ」に匹敵するぐらい(笑)。

 

雑踏の中でそのシャヒーダーが出会ったのが、正直者でお人好しなパワン(サルマーン・カーン)。
おや、お嬢ちゃん(ムンニーちゃん)どうしたんだい? 迷子になったのかい?
ヒンドゥー教ハヌマーン神の信者であるパワンは、これも神の思し召しと思って、シャヒーダーを家に連れ帰る。

 

このパワン(周りから“バジュランギ”と呼ばれている)、彼女(カリーナ・カプール)の実家で暮らしている。
実はこの映画の前半は、パワンと彼女の恋物語が軸となっている。
ここではインド映画お約束の歌と踊りが堪能できる。

 

主役のサルマーン・カーンは、インド製本格的アクション諜報員ものの「タイガー」でも活躍していた。
やはり濃い顔立ちだなあ(苦笑)。
ヒロインのカリーナ・カプールは「きっと、うまくいく」に出ていた。
なぜか小林幸子を思い出してしまう顔立ち(苦笑)の人。

 

さて、これも知らなかったことなのだが、大部分のヒンドゥー教の人は肉も魚も食べないらしいのだ。
ところがシャヒ-ダーは野菜ばかりの食事を嫌がって、よその家で鶏肉料理を食べさせてもらったりする。
えっ、ムンニーはイスラム教なのかい?!

さらに、えっ、ムンニーはパキスタン人なのかい?!
なんということ、パワンとは宗教も国も違うではないか。それも対立している宗教と国だっ!

脚本も書いたカビール・カーン監督は、自身がムスリムの父とヒンドゥー教徒の母の間に生まれたとのこと。

 

このあたりはコメディ・タッチも入って、パワンは、あちゃ、といった感じでしばしば額を叩く仕草をする。
この仕草をおぼえたシャヒーダーが後半で、あちゃ、といった場面で真似をする。
もう、めちゃくちゃ可愛い(嬉)。

 

ここからパワンの無類の善人ぶりが発揮される。
よし、おじさんがムンニーをパキスタンの家まで送り届けてあげよう!
ということで、2時間半越えのこの長尺の映画の真ん中あたりになって、やっと旅立つことになる(笑)。
それからは基本的にはロード・ムーヴィーなのだが、生半可な旅ではない。

 

なにしろ、パスポートもビザもない。
どうやって国境を越えたらいいんだ?
難題である国境越え。さらに身分証明書も持っていないためにパキスタン警察からはスパイ容疑をかけられて追われる身になる。
大変なロード・ムーヴィーなのだ。

 

しかし、旅の途中で出会う人達がまた好いんだな。
追っ手からふたりを隠してくれるバスの運転手、何も言わずに寝るところを世話してくれるモスクの先生。
それぞれに味のある人達だった。こういった善意の人の姿にはじんとくる。
旅が過酷であるだけになおさらだ。

 

そして、始めはスクープを狙っていたのに途中からはふたりの旅の協力者になってくれたTVリポーター。
彼も、パワンの無償の愛の行為に打たれたのだろうな。

 

無事に家族の元へ帰れたシャーヒダーだったが、彼女を助けるためにパワンは警察に捕まってしまう。
スパイ容疑で拷問にかけられるパワン。
こんな好いことをしたのに、なんて理不尽な目に会わなければならないのだ・・・。

 

(以下、物語の最後へ)

 

TVレポーターがながしたSNSの映像で、パワンの行為にインド、パキスタン両国の人が心を動かされる。
そしてパワンは傷ついた身体で国境の川へやって来る。
向こう岸にはパワンの身を案じ続けていた彼女も待っている。

さあ、川を渉ってインドへ帰ろう。

 

そのとき、母親に連れられたシャヒーダーが到着する。
そして川を渉ろうとしていたパワンに向かって、話すことのできなかったシャヒーダーが、バシュランギっ!(おじさんっ!)と呼ぶのだ。

 

長い映画だが、社会的な問題点を背景にしながらも、歌と踊り、そしてコメディ要素で楽しく魅せてくれる。
そして、最後には思わず涙。
無償の愛と清々しい人間性、これが素直に好いなあと思わせてくれる。

 

インドとパキスタンの対立は根本的なものであったのだが、パワンにはそれを越えるほどの根源的な愛があったわけだ。
それだけの大きな愛がなければ、国や宗教の対立の壁は乗り越えられなかったのだ。
そこがこの映画の素晴らしさだ。

 

誰にでもお勧めできる映画でした。