2005年 ドイツ
監督:ビャンバスレン・ダバー
モンゴルの遊牧民一家の暮らし。 ★★★☆
ドイツ映画ということになっているが、題材はモンゴルの風物詩。
監督はモンゴルのウランバートル出身で、今はミュンヘンに住んでいるとのこと。
移動式住居ゲルに暮らすモンゴル遊牧民一家の生活を描いている。
父は羊の放牧をして、その乳でチーズを作る母、そして6歳の少女ナンサとその妹、弟。
ドキュメント映画といってもいいほどに、淡々とした映像が流れる。
ある日、ナンサはお使いの途中でかわいい子犬を見つける。
ナンサは子犬をゲルに連れて帰るのだが、オオカミの仲間かも知れないといって父は飼うことを許してくれない。
しかし、ナンサは隠れて子犬を飼い始める。
とりたてての事件が起きるわけでもなく、ともすれば退屈になりがちなところだが、ゆったりと流れる日々の有り様をを観ていると、癒やされるような気になってくる。
モンゴルの広々とした風景も美しい。
まったく演技をしているようには見えない一家の様子にいつしか見入ってしまう。
乾燥した羊の糞は燃料にするようだ。
糞を集める手伝いをするナンサなのだが、背中の籠に投げ入れたはずの糞は籠を飛び越えていたりする。
一生懸命なナンサが可愛い。
素朴な生活。
プラスチックの柄杓一つでも、町へ出たついでに買ってこなければならない。
小さな風車が回っていて、わずかな電気は起こしているようだった。
ナンサは老婆から輪廻転生の話も聞く。
人間の前世は動物で、善行を重ねたものだけが人間として生まれてくる。これは大変な奇跡なのだよ。
そうか、モンゴルの大平原でそんな風に思って人生を生きていくのか。
終盤に、一家がゲルをたたんで次の土地に移住する場面となる。
家財道具のすべてをまとめて、ゲルを解体する。
なるほど、ゲルはこんな風に組み立てられていたのか。
もちろん風力発電の羽根を廻していた長いポールも持っていかなくてはならない。
映画の最後に、バットチュルーン一家の協力に感謝する、という意の謝辞が出た。
すると、これは実際の一家をモデルに撮ったということだろう。
どこまでも自然体の映画だった。
とにかく観終わった後に、気持ちがきれいに洗われたような気になる。
しあわせな気分で満たされる作品だった。