あきりんの映画生活

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「ぼくの大切なともだち」 (2006年)

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2006年 フランス 96分
監督:パトリス・ルコント
出演:ダニエル・オートゥイユ、 ダニー・ブーン

ほのぼの苦笑いコメディ。 ★★★☆

 

先日観た「橋の上の娘」もよかった。次のルコント作品は、これ。

 

美術商のフランソワ(ダニエル・オートゥイユ)は、自信に溢れた生き方をしてきた(と自分では思っていた)。
自分の誕生日を祝ってくれる夕食会の席で、彼は葬儀の参列者が7人しかいなかった話をする。
すると、夕食会の出席者の皆から、お前も友達がいないから葬式には誰も来ないよと言われてしまう。

 

そんなことはあるものか、自分には親友が沢山いるぞ、だいたい君たちだって友だちじゃないか。
すると、そこにいた全員が、自分はお前の友だちなんかじゃないよ、仕事上の付き合いだけだよ、と言うではないか。
何ということだ、よし、俺にも親友がいることを証明してみせるぞ。

 

人は、自分では思ってもいなかったような欠点を指摘されると、愕然とするもの。
プライドも傷つく。
そんなことはあるものか、とムキになる。
そうじゃないことを、なによりも自分自身が確かめたいわけだ。

 

フランソワは昔の同級生が親友だったはずだと会いに行く。
親友のあいつはきっと懐かしがって、俺を夕食に誘ってくれるはずだ。うん、きっとそうだ。
ところが、そのかっての同級生はつれない素振りなのだ。
おいおい、どうしたんだ。久しぶりで懐かしいだろ。夕食に誘ってくれないのか。
何か勘違いしてないか。お前はみんなに嫌われていたんだよ。

 

自分では気づいていなかったのだが、フランソワはジコチュウの生き方しかしてこなかったのだな。
なんということだ、俺は友だちの作り方も判らないぞ。

 

あたふたと途方に暮れるそんなフランソワを、身から出た錆だな、と思いながら観ている。
しかし、なんとなく我が身を振り返ってしまうような気持ちにもなってきて、いささかほろ苦い。
ルコント監督は、こうした少し捻れた人間感情を描くのが上手い。

 

そこで知り合ったのはおしゃべりで物知りなタクシー運転手のブリュノ。
誰にでも親切に話しかける。誰とでもすぐ打ち解ける。
フランソワはブリュノに、どうすれば友達が作れるのかの教えを請い、その練習もしてみる。
しかし、そんなに簡単にいくはずもない・・・。

 

続く展開としては、ああ、そうか、友だちはもうできていたんだ、ブリュノは友だちじゃないか、となる。
これだけなら余りにも安易な展開。そのへんの青春コミックと変わらない(汗)。
ここからがルコント監督らしい、ちょっと意地悪な展開となる。

 

よせばいいのに、フランソワはブリュノが親友であることを、あることをして証明しようとする。
おいおい、親友なんて、なにか実験をして確かめるようなものじゃないだろ。
案の定、そんな余計なことをしたばっかりに・・・。

 

最後、並のよかった、よかった的な展開ではないところが、さすがにルコント監督。
どことなくほろ苦い、それでいて人間味のある結末だった。