あきりんの映画生活

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「やがて復讐という名の雨」 (2007年)

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2007年 フランス
監督:オリビエ・マルシャル
出演:ダニエル・オートゥイユ

暗い刑事もの。 ★★★☆

 

同じ監督、主演の「あるいは裏切りという名の犬」の雰囲気がよかったので、これは気になっていた作品だった。
原題は「MR73」で、これは終盤に出てくる拳銃の名前である。
邦題は凝っているなあ。こういうタイトルの好きな社員がいたのだろうなあ。

 

主役は、事故で子どもを失い、妻は植物人間になってしまった刑事のシュナイデル(ダニエル・オートゥイユ)。
かっては優秀な刑事だったらしいのだが、今はアル中状態で署内でも問題ばかり起こしている。
そんな彼は執拗に猟奇的な連続殺人犯を捕まえるべく捜査していた。

 

平行して、もうひとつの事件が描かれていく。
こちらは25年前の猟奇的な連続殺人事件の被害者遺児と犯人の物語。
父母を無惨に殺された娘のジュスティーヌは、収監されていた犯人が仮釈放されると聞いてトラウマに襲われる。
しかもその犯人はジュスティーヌを襲いそうなのだ。

 

とにかく暗く、重い雰囲気が最初から最後まで続く。
主人公がアル中で希望のない生活を続けているので、観ている者は感情移入もできない。
しかしこの雰囲気はハリウッドものにはないもの。好きな人はハマる要素を持っている。

 

それにダニエル・オートゥイユの存在感がすごい。
とてもパトリス・ルコント作品の「ぼくの大切なともだち」や「橋の上の娘」で飄々とした人物を演じていた人とは思えない重さで迫ってくる。
さすがフランスの名優である。
シュナイデルを何とかして庇おうとする女性署長も好い感じだった。

 

物語の展開はゆっくりとしている。
重厚というか、丁寧というか、澱んだ雰囲気をあらわしているというか。
カメラはとても好い。パリの町並みや、山里風景の映像、そして登場人物達を捉える構図など、美しい。

 

二つの連続猟奇殺人事件が直接にクロスすることはない。
後半でシュナイデルとジュスティーヌが出会って、わずかに繋がりが生じるだけである。
そこが肩すかしのようで、不満に感じる点にはなっている。

 

ユーモアとか笑いとかとはまったく無縁の地点で物語は進み、最後まで救いはどこにもない。
わずかに新しく生まれた命の存在だけがかすかに明るかった。
この独得の暗さ、重さの雰囲気を味わう映画と言ってもいい。

 

この作品の次に「「いずれ絶望という名の闇」という3作目があるそう。
気になるなあ。