あきりんの映画生活

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「花束みたいな恋をした」 (2020年)

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2020年 日本 124分
監督:土井裕泰
出演:菅田将暉、 有村架純

王道のラブ・ストーリー。 ★★☆

 

終電を逃した大学生の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)は偶然に出会う。
この映画は、そこで趣味が似ていたりしてすぐに恋に落ちた二人の5年間を描いている。
恋の始まりから、甘酸っぱい別れまでの5年間である。

 

二人は実に生き生きと描かれている。
最近読んだ小説の話で盛り上がったり、好きな曲が一緒だったり。
もう好きになり始めたら、どんなことでも二人の仲を近づけてしまうのだ。
そんな浮き立つような恋の始まりの日々は、端から見ていても微笑ましくなるぐらい。

 

やがて学生生活を終えた二人はフリーターをしながら同棲を始める。
お気に入りのパン屋を見つけ、拾った猫に名前を付ける。
2人で一緒に楽しい日々を送り、そんな生活を守っていきたいと就職活動にも励む2人だったが…。

 

二人の近付き方、そして同棲生活などの雰囲気は、あの往年の名TVドラマ「東京ラブストーリー」に似ているな、好い感じだな、と思いながら観ていた。
後で脚本が同じ坂元裕二だと知った。
やはりその人らしさというのは出るものなのだなあ。

 

学生時代とは違った生活の問題が二人の間に齟齬を生み出し始める。
学生時代とは違って、社会人になってからの男と女では夢の見方も違ってくるのだ。
相手を決して嫌いになったわけではないのに、それでも上手くいかなくなってくる。

 

こうなると辛いよなあ。
二人の仲をなんとか保ちたいと、麦は結婚しようと申し出る。
結婚生活は、やはり同棲生活とは違った意識が必要になるのだろう。互いに相手への責任意識が変化するのだろう。
でも、それは大きく失うものがあることを意味している。その失うものを許容してまで結婚する?

 

友達の結婚式の帰りに二人は別れを決意する。
ファミレスでの二人が、互いに相手のその思いが判っているところが切ない。
演出として、その店に出会ったばかりの二人に似たカップルが登場する。
あざといなあと思いながらも、かっての初々しくこれから始まる恋の予感にいっぱいの二人の様子は、今との隔たりを見せつけて魅せてくれた。

 

「花束みたいな」とはどういうことだったのだろうと思ってしまう。
きれいに切りそろえられた花束の花は、ひととき美しく咲いているが、やがては枯れていく運命にある。
そういう運命の恋だったということか。

 

東京ラブストーリー」の最終回、カンチと赤名リカの別れはもう号泣ものだった。
今作も、もしあのときくらいの年齢で観ていれば、ラスト場面あたりは号泣していたのではないだろうか。
それほどに上手く作られていた。
ただ惜しむらくは、若者のラブ・ストーリーに強く心を揺さぶられるのには私が年をとりすぎてしまっていた。
悲しいことだが、仕方がない。

 

主役の二人はとても等身大の感じで演じていた。
最後、別れた後の二人がそれぞれの恋人とともに出会うのも好かった。
振り返りもせずに軽く手を上げて離れていく二人も爽やかだった。
東京ラブストーリー」の後日談で、赤名リカが結婚したカンチと里美ちゃんに雑踏の中で出会う場面を思い出してしまった。