1985年 日本 112分
監督:大林宣彦
出演:尾美としのり、 富田靖子
尾道三部作の3編目。 ★★☆
わざと作り物めいた映像を駆使して、どこかノスタルジーに満ちた作品を作る大林宣彦監督。
第1作の「ハウス」からファンだった。
彼のベストは、新・尾道三部作のひとつ「ふたり」だと思っている。
本作は「時をかける少女」「転校生」につづく尾道三部作の3作目。今まで未見だった。
寺の一人息子・ヒロキ(尾美としのり)はカメラ好きの高校生。
悪友たちと気楽な毎日を送り、ファインダー越しに隣の女子校でショパンの「別れの曲」を弾く少女・百合子(富田靖子)に片思いをしていた。
彼女を勝手に“さびしんぼう”と呼んでいたヒロキだったが、その彼の前に、白塗りの顔の少女(富田靖子の2役)があらわれる。
“さびしんぼう”と名乗るその子は神出鬼没で・・・。
色あせた色調で坂道の多い尾道を舞台にした青春が撮られている。
映画全体の雰囲気は、尾道三部作の「時をかける少女」「転校生」とよく似ていた。
しかし、本作はどうもしっくりこなかった。
実はさびしんぼうは、高校生時代の母親だったのだが、その設定がどうもしっくり来なかったのだ。
ヒロユキは片思いしている百合子をさびしんぼうと勝手に名づけていた。
つまり、若い頃の母親と恋人を同じ呼び名にしているわけで、そこが何とも微妙だった。
白塗りであらわれた若い日の母親を”さびしんぼう”と呼ぶのはいいとして、恋人は別の呼び名でも好かったのではないか。
”さびしんぼう”という言葉(大林監督の造語らしい)は、恋をする気持ちは寂しい、ということからきているとのこと。
とすると、恋をしているヒロユキ自身が”さびしんぼう”ということになってしまいそうだが、それでは上手くないのだろう。
どうも、若い日の母親と片思いの恋人と、両方のイメージを重ね合わせようとしたところに無理があるように思ってしまった。
で、どうも他の尾道作品ほどには情感に浸ることができなかった。残念。
エンドタイトルではインストルメントで曲が流れ、尾道の風景が映されていく。
情感に溢れるものだった。
DVDのおまけ映像には、映画公開時のエンドタイトル映像が付いていた。
大林監督の意向で、DVD制作の時にエンドタイトル画面が改変されたとのこと。
オリジナルのエンドタイトルではさびしんぼうの扮装の富田靖子が出てきて、日本語歌詞で「別れの曲」を歌っていた。
お世辞にも上手な歌ではなかった(汗 富田靖子ファンの方、ごめんなさい)。
見比べてみると、DVDのものの方がずっと好みだった。
裏話を読むと、富田靖子の2週間の学校休みに合わせて急遽台本を作って撮影したとのこと。
ちょっと設定に無理があったのではないかなあ。
でも、大林ファンの評価はとても高い映画です。