2020年 日本 110分
監督:羽住英一郎
出演:藤原竜也、 竹内涼真、 ハン・ヒョジュ
産業スパイもの。 ★★★
芥川賞作家の吉田修一原作の映画には、「さよなら渓谷」「横道世之介」「楽園」「悪人」と好いものが多かった。
彼は純文学だけではなく、さまざまなエンタメ系の小説も書いている。
本作の原作小説は産業スパイというか、秘密エージェントというか、そんなもののアクションもの。もう完全にエンタメ小説だった。
映像にしたら派手なものになりそうな小説だったようなあ。
鷹野(藤原竜也)は、小さなニュース配信会社“AN通信”の社員。
しかし、その会社は違法に入手した機密情報を売買する産業スパイ組織だった。
鷹野と相棒の田岡(竹内涼真)は、そんなAN通信のすご腕エージェントだったのだ。
そして彼らの心臓には遠隔操作で爆発する爆弾が埋め込まれていた。
今回の彼らのミッションは、データ通信の新技術にまつわるもの。
日本や中国の商社やら、なんやかやが、その新技術の情報や材料やなんやかやをめぐって争う。
鷹野らの他にも宿敵らしい香港のエージェントや、謎の美女も登場してきて、騙し騙され。
とにかく鷹野らは24時間ごとに本部へ連絡を入れなければならない。
さもないと敵に捕まったとみなされて、秘密が漏洩する怖れがあるということで胸の爆弾で消されてしまうのだ。
田岡がぼやく、こんな死と隣り合わせの毎日にどんな意味があるんですか?
鷹野が吠える、今日一日を生きるだけだ。今日一日を生き延びることだけを考えるんだっ!
でも、どうして胸に爆弾が埋め込まれるような人生になったのだ?
ということで、激しいアクションの合間には、鷹野がこの苛酷な任務に就くことになった過去も語られる。
決して人身売買をされたりとか、強制的にだったりとかではなかったのだな。
冷酷な指令を出していると思えた上司(佐藤浩市)も、実は好い人だったではないか。
誤解していたよ、ごめんね。
絵空事ではあるのだが、そういう設定での緊張感を楽しむ映画。
例によって舞台口調で見得を切る藤原君はいつも通りで好かったよ。
それに、彼がかなりのアクションをもこなすことに感心した。
浸水してくる船底での田岡救出とかは、なかなかに頑張っていたものなあ。
コロナ禍の関係で劇場公開が延び延びになって、予告編も1年近く見せられた映画だった。
ま、無茶な設定もあるわけだが、楽しめればそれで良し、という種類の映画。
すでにシリーズ続編が作られているようだ。
「カイジ」シリーズの後をとって、藤原君にはこのシリーズでも頑張って欲しいぞ。