1986年 アメリカ 119分
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ポール・ニューマン、 トム・クルーズ
老いたハスラーの奮起。 ★★★
ポール・ニューマンのビリヤード映画「ハスラー」の続編。
前作から25年後という設定で、映画自体も25年後に作られている。
かつては腕利きハスラーだったエディ(ポール・ニューマン)も今はもう50代となり、現役を離れていた。
若いハスラーの胴元になったり、酒のセールスをしたりする日々だったが、ある日、ビンセント(トム・クルーズ)という若いハスラーが目に留める。
彼の才能を見抜いたエディは、彼を最高のハスラーに育てたいという情熱に駆られる。
ハスラーというと、日本では単にビリヤードをする人という意味で使われているが、本来はビリヤードでギャンブルをする勝負師をさしているようだ。
この映画の”ハスラー"もお金を賭けてビリヤードをする人を指している。
だからビリヤード場でどうやって金を稼ぐかがハスラーにとっては眼目となる。
始めから強いことがバレてしまっては、だれも高い掛け金に乗ってこない。
適当に弱く見せかけておいて、最終的に高額な掛け金となったときに本領を発揮するわけだ。
エディは、人の心を操れるようにならなければ一流のハスラーではない、と言う。
さあ、どうやって相手に高い賭けに引っ張り込むかだ。そこでしっかり稼ごうぜ。
エディがビンセントを鍛えようとしたのは、衰えた自分の代わりとしての夢をみようとしたからだろう。
もうあの頃の自分じゃないという現役を引退した男の寂しさがそこにはあったわけだ。
初老にさしかかったポール・ニューマンが渋くて格好いい。
同時代のもうひとりの名優、スティーブ・マックィーンが野性的な魅力だったのに比べて、ニューマンは上品さが魅力的だった。
相方のトム・クルーズはまだまだ若造。青臭いなあ。
若さの特権である小生意気さや、自信過剰ぶりを上手く演じていた。
エディは中盤で黒人ハスラーにまんまとかもられてしまう。俺も焼きが回ったもんだぜ。
その黒人ハスラーは、おや、フォレスト・ウィティカーではないか。
この映画のころはまだそれほどの俳優ではなかったようで、クレジットでも後の方のその他大勢といった感じで表示されていた。
しかしこの頃から、どこか憎めない味のある演技をしていた。
しかし、プロたるものキューにはやはりこだわるのだということをあらためて知った。
若い頃に少しだけビリヤードをしていたのだが、店に置いてあるキューはどれもしなっていたものなあ。
あんなに歪んだキューでは正確なショットは出来ないわけだ。ま、当たり前か。
それはさておき。
観るまでは、この映画はエディによってビンセントが一流はスラーに育っていく物語だと思っていた。
まったく違う展開だった。
後半になると、エディ自身のハスラー魂に火がついてしまうのである。
おお、復活したレジェンド・エディも頑張るではないか。
ビリヤード大会のトーナメント戦で、エディもビンセントも勝ち進んでいくぞ。
これは、二人は準決勝で当たるぞ。どちらが勝つんだ?
(以下、ネタバレ)
クライマックスはいよいよ2人の師弟対決かと思っていた。
そして見事にエディが勝ったのだった・・・と思っていたのだったが・・・。
まさかのビンセントの手抜き、そしてそれを潔しとしないエディの決勝戦棄権・・・。
まことに渋い展開だった。
ポール・ニューマンは本作でアカデミー賞主演男優賞を獲っている。
決して悪い映画ではないのだが、個人的にはこの作品よりも主演賞にふさわしいニューマンの作品があったのではないかと思ってしまった。