あきりんの映画生活

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「マダム・イン・ニューヨーク」 (2012年)

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2012年 インド 134分
監督:カウリ・シンデー
出演:シュリデヴィ

ニューヨークのインド人。 ★★★☆

 

インド映画も歌って踊って派手なアクションばかりしているわけではない。
これは異文化の都会で前向きに生き始めた中年女性(といっても、やっぱりすごい美人)のお話。
パリのアメリカ人ならぬ、ニューヨークのインド人。

 

料理上手の主婦シャシ(シュリデヴィ)は、2人の子どもとビジネスマンの夫に尽くす日々。
しかし得意のお菓子作り以外では誰も感謝してくれない。
そればかりか、家族の中で自分だけ英語ができないことをバカされている。
主婦として埋没してしまい、尊重されていないシャシ。
私なんて、どうせそれぐらいの人間なんだわ・・・。

 

そんなある日、ニューヨークに暮らす姉から姪の結婚式の手伝いを頼まれ、シャシは家族より一足先にニューヨークへと向かう。
ところがシャシは英語ができない。そのためにトラブルばかり。
スタバ(ドゥトールだった?)での注文もままならない。困ったわ。

 

たしかに我が身を振り返っても、言葉が通じにくい異国での買い物や食事には苦労する。
英語圏だとこちらが言いたいことは何とか言えるのだが、相手の言葉が聞きとれない。困る。
フランス語圏とか、ハングル圏だと、もう何がなにやら・・・。

 

さてそんな時、シャシは短期間の英会話教室を知り、誰にも内緒で通い始める。
その教室には世界各国の英語が話せない仲間がいた。
シャシは、かれらと一緒にゲイの優しい先生の教えで英語を少しずつ身につけていく。

 

この教室の仲間たちが好い味を出していた。
シャシに好意を抱き始めるフランス人、社交的な韓国人、無口なアラブ人、などなど。
そこで彼女は自分の存在する意味に気づき始める。

 

個人を尊重するアメリカ文化の中で、伝統的な美しさや知識を持つ個人としてシャシは認められるのだ。
ニューヨークの街中をサリー姿で歩くシャシは、奇異な目で見られることもなく、伝統美のある個性として捉えられる。
とても美しかった。

 

そして4週間が経ち、姪の結婚式の当日となる。
結婚式でシャシが求められたスピーチを、何も知らないままの夫が、妻は英語が苦手なので、と断りかける。
それを制してシャシは英語でのスピーチをはじめる。
シャシが英語を話せるようになっていたことに驚く夫や子どもたち。
そのスピーチの内容も人が新しく生き始める大切さに触れていて感動的なものだった。

 

シャシが望んでいたのは、家族から一人の人間として尊重されること、ただそれだけだったのだ。
そしてそれが叶わないままに、自分も変わろうとしてこなかったのだ。
でも、もう違う。
自分を変えた、これが私なのだと自信を持つことで、夫や子どもたちと新しい信頼を築いたのだ。

 

気持ちが前向きになれる好い映画でした。
いわゆるポリウッドと呼ばれるインド映画に抵抗のある方にもお勧めできる作品です。

 

ヒロイン役のシュリデビは4歳の時から映画に出ていて、インドでは国民的大スターだったとのこと。
2018年に54歳で事故死されています。残念。