2019年 ロシア 152分
監督:イゴール・バラノフ
侵略SFもの。 ★★☆
近未来の全世界で電力が喪失するブラック・アウトが発生する。
どうやら宇宙からの特殊な放射線照射によるものらしい。
月の陰になっていたわずかの地域だけが被害を免れ、ロシア軍特殊部隊が調査を開始する。
構想は雄大で、後半になると、人類の起源にまで話が及ぶ。
しかし長い。なんと2時間半越えである。
派手な銃撃戦や爆破シーンもあるのだが、展開は割とのったりとしていてキレがない。
う~ん、長いなあ(長さを感じさせない傑作映画もあるのだが・・・)
主な登場人物は男女二人ずつの4人。
同じ部隊にいるロシア軍兵士2人と、従軍看護師、それに取材に同行している女性記者。
彼らの過去も断片的には出てくるのだが、あまり関係ないんじゃね?
無駄に尺が長くなっているだけだったような気が・・・。
しかし、繰り返しになるが構想は雄大なのだよ。
中盤でついにイドという宇宙人が登場してくる。
姿形は人間とよく似ているのだが、顔の下部を覆っていた布を取ると、おや、口がない。
どうやって食べるんだ?
この映画に今ひとつ感情移入しにくかったのは、主人公たちが闘う相手が同じ人間であること。
宇宙人によって奴隷にされた何億人かの人間は、もう理性も感情もなく主人公たちを襲ってくる。もちろん死など怖れない。
ロシア軍は機関銃で彼らを撃ち殺し、装甲車で轢き殺していく。
それでも彼らは次から次へと襲ってくる。
そう、宇宙人の奴隷となった彼らは(私の嫌いな)ゾンビと一緒なのである。
やがてイドが問う、ピラミッドを本当に人間が作ったと思っているのかね?
えっ、(やはり)ピラミッドやナスカの地上絵は人類の作ったものではなかったのか・・・。
(以下、ネタバレ)
実は、イドたちは20万年前に地球にやって来て、やがて消滅する母星から地球への移住を計画したのだ。
当時、地球を支配していたのは高度な知能の先住生命体だった。
そして彼らを駆除するために、自分たちと似たDNAの人類を創りだし、ウイルスとして地球に送りこんだのだ。
ウイルスである人類によって先住の生命体は絶滅して、その後に人類だけが繁殖したというのだ。
えっ、人間て、先住民を絶滅させるための人工産物だったのか。
人間てそんな存在のものだったのか・・・。
聖書には、神は自分たちに似せてヒトを創ったとあったが、それじゃ、神というのは・・・。
(あのエイリアン「プロメテウス」でも人間の起源は・・・という設定だったな)
宇宙人の最終計画は、人類を奴隷化して地球を手に入れること。
さあ、もうじき、移住民を載せた巨大宇宙船が到着するぞ。
でも、この映画は人間が作ったものだから、本来はウイルスだろうが何だろうが、人間は宇宙人と闘うのだよ。
そして、移住のために巨大宇宙船の中で冬眠していたおびただしい数の宇宙人を倒すのだよ。
しかし最後、たった3人だけ生き残った人間は、生まれてきた宇宙人の子どもたちにとっては”神”になる?
設定や狙いは独創的な部分もあってよかったのだが、どうも上手くまとまっていなかった。
もうちょっとすっきりとした構成にすれば傑作になったのかもしれないなあ。