あきりんの映画生活

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「ウルフズ・コール」 (2019年)

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2019年 フランス 115分
監督:アントナン・ボードリー
出演:フランソワ・シビル、 オマール・シー

潜水艦もの。 ★★★

 

正体不明のソナー音に翻弄される原子力潜水艦の物語。
そのソナー音によって、フランスの潜水艦はロシアに向けて核ミサイルを発射すべきか否かの選択を迫られる。
これは緊迫するぞ。

 

主人公は“黄金の耳”と呼ばれるフランス軍潜水艦の特殊分析官シャンテレッド。
視覚を持たない潜水艦にとっては、聴覚による状況分析がすべてとなる。
これが潜水艦もののキモとなる。

分析官は大変に重要な存在なのだ。

 

シャンテレッドは人並外れた聴覚でソナー音を分析していたが、ある時まるで“狼の歌”のような音を初めて聞く。
”ウルフズ・コール”と名づけられたそのソナー音に惑わされて作戦失敗をもたらしてしまったシャンテッド。

 

くそ、あの音の正体を絶対に突き止めるぞ。
そのソナー音の特定に執念を見せるシャンテレッド。
やがて彼はそれがすでにデータから削除されたロシア潜水艦の音紋だったことをつきとめる。
どうして廃棄されたはずの潜水艦が海中にいるんだ? なにかロシアの企みがある?

 

分析官は敵潜水艦の魚雷発射口が開いたかどうかを聞き分ける。
それどころか、相手の潜水艦のプロペラが4枚か5枚かまで聞き分ける。
それによって敵艦を特定したりもする。
すごいな。艦長も分析官に頼るはずだ。

 

さて、フランスも戦略型原潜を持っているわけで、その新鋭艦が任務に就く。
すると、例の”ウルフズ・コール”の潜水艦からフランスに向けて核ミサイルが発射されたという情報が入ってくる。
その核ミサイルの迎撃に失敗したフランス大統領は、戦略型原潜にロシアに向けて核ミサイルを発射しろとの命令を下す。
なに、いよいよ核戦争が勃発するのか?

 

核ミサイル発射指令を受けた潜水艦の映画というと、「クリムゾン・タイド」が思い浮かぶ。
母国を救うために一刻も早く発射ボタンを押すべきか、もし情報が誤っていたら大変なことになる、なんとかしてもう一度確認するべきか。
あの映画も、核ミサイルの発射をめぐって艦長たちが苦悩する物語だった。

 

とにかく潜水艦は密閉されて、外の世界からは隔絶されている。
その状況下で世界の運命を左右する決断をしなければならない。
これが緊張感を盛り上げてくれる。

 

(以下、ネタバレ)

 

実は、”ウルフズ・コール”の潜水艦はロシアから中東のテロ組織に売却されていたのだった。
そしてテロ組織は核を搭載していない普通のミサイルを撃って、フランスがロシアに向けて報復の核ミサイルを発射するように仕向けたのだ。

これは大変だ、なんとかして核ミサイルの発射を停めなければ。
大統領が核ミサイル発射を命じたあの艦はどこにいるのだ? 連絡をどうやって取ったらいいんだ?

 

しかし、一度大統領命令を受けた艦は、以後の外部との通信を絶って、核ミサイルの発射準備に取りかかる。
この映画が特異だったことは、クライマックスが敵との戦いではなく、味方同士の戦いであったところ。
別の艦で追ったシャンテレッドたちは、核ミサイル発射を阻止するために自国の新鋭戦略原潜を攻撃するのだ。

 

潜水艦ものの緊迫感はよく出ていた。
主人公をソナー音分析官にしていたのも好い設定だとは思えた。
しかし、そのクライマックスの戦いが味方同士で、しかも無益な核ミサイル発射尾を阻止するためとはいえ、多くの犠牲を出していた。
ということで、必ずしもすっきりとした結末ではなかったのは、残念だった。

 

(つっこみ)
肝心の”ウルフズ・コール”艦はどうなったのだろうね?