2021年 フランス 129分
監督:ヤン・ゴズラン
出演:ピエール・ニネ、 ルー・ドゥ・ラージュ
音声分析捜査官の活躍を描く。 ★★★☆
飛行機墜落事故をめぐるサスペンスものである。
主人公のマチュー(ピエール・ニネ)は航空事故調査局で働く音声分析官。
300人を乗せた旅客機がアルプス山中に墜落し、彼はブラックボックスの分析を担当することとなる。
タイトルにもなっているブラックボックスは、正式にはフライト・レコーダーといわれているもの。
飛行データや操縦室の音声を記録しており、飛行機が事故にあっても壊れたり燃えてしまわないようになっている。
事故や事件が起きたときの真相解明のための記録が残されているわけだ。
映画ではそのブラックボックスを慎重に外側容器から取り出す場面もあった。
すごい。そりゃものすごい衝撃や高熱にも耐えられるようになっているのだから、その防御は鉄壁なのだが、それにしても想像以上に厳重なものだった。
(車のドライブ・レコーダーも事故の衝撃や火災で破損しては困るわけだが、あんなに頑丈ではないよね。)
さて、その墜落機のブラックボックスに残されていた物音、音声をマチューは分析していく。
機長と管制官との通話などの音声データから、ノイズ除去などの処理を施していく。
通常はあまり知らないこういったプロフェッショナルの仕事というのは格好好い。
音だけの変化では単調になってしまうので、ディスプレイ上の波形を見せたりして視覚的に動きを持たせていた。
マチューは非常に優秀な音声分析官なのだが、自分の信念が強すぎて周りともよく衝突する。
プロフェッショナルの優れた才能が、その人を狭い場所にしか適応できない変人にもしてしまうわけだ。
こういう人物って、いそうだよなあ。
しばらく前に観た映画「ウルフズ・コール」では潜水艦の特殊分析官を描いていた。
あの映画の主人公も、とにかくソナー音の分析には優れているのだが、人間的には欠陥を持ち合わせていた。
記録されていたかすかな声などから、当初はイスラム過激派によるテロが疑われる。
しかし、さらに情報を探っていくと、この飛行機事故には大がかりに隠された秘密があることが判ってくる。
だいたいが、始めは担当だったマチューの上司が謎の失踪を遂げているんだよ。
これ、怪しくね?
マチューの美人の奥さん(ルー・ドゥラーシュ)は、政府機関で新型航空機の認証をおこなっていた。
この奥さんが飛行機事故を起こした航空会社に引き抜かれていたぞ。
・・・偶然、てあるんだね・・・。
(以下、ネタバレ)
飛行機や自動車の自動操縦技術は日ごとに改良されているのだろう。
しかし、それと平行して、その技術をどこまで信頼していいのかも正しく検証されなくては怖い。
自動操縦のプログラムがハッキングされてしまえば、飛行機も自動車もそのハッカーの思い通りに操縦されてしまうぞ。
そんなことを意図するハッカーがいれば、これは怖ろしい。
そしてさらに、偶然に生じる事態(!)にも安全性が確保されていなければならないのだが・・・。
マチューは航空機業界の闇に迫っていくことになる。
そしてラストに向かって事態は大きく動いていく。
マチューの美人の奥さん、あなたは・・・。
事件そのものにはそれほどのひねりはありませんでしたが、構成が見事で、サスペンス映画としての緊張感が好く出ていました。
お勧めの映画です。