1981年 西ドイツ 135分
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
出演:ユルケン・ブロフノウ
リアル潜水艦ものの傑作。 ★★★
第二次大戦のヨーロッパ戦線で、連合軍の補給路を断つために暗躍したのがドイツ軍の潜水艦、通称Uボート。
この映画はそんなUボートの顛末をリアルに描いている。
1941年、ナチス占領下のフランスの港町から、一隻のUボートが出港する。
映画のほとんどの場面は狭い艦内。そこでの息詰まる人間ドラマである。
40名余りが乗り組んでいるのだが、潜水艦の内部は機能的というか、空間的余裕がないというか、とにかく狭いのだ。
閉塞感が精神状態まで支配してしまいそうである。
圧壊深度を確かめるための訓練もおこなわれる。
これは恐ろしいだろうなあ。いつ水圧に負けて艦がぐしゃっとつぶれるかわからない。
艦がきしむ音を聞くだけで、もう漏らしてしまいそうだよ(汗)。
敵の攻撃に遭遇して急速潜行するとき、乗組員は一斉に艦首に向かって艦内の狭い通路を走る。
艦首部分を重くして少しでも早く潜行しようというわけだ。
リアルである。なるほど、こんなことは知らなかったな。
潜水艦の閉塞感を高めるのが、外部の状況がまったく見えないというところ。
微かな音を聞き分けて、外では何が起こっているのかを判断しなければならない。
意を決して潜望鏡を使えば敵に発見されてしまう危険が増す。
恐ろしいなあ。
潜水艦映画に外れなし、とはよく言われる。
「レッドオクトーバーを追え」にしても「クリムゾンタイド」にしても、十分なエンタメ性があった。
古くは「眼下の敵」という傑作もあった。
(漫画では「沈黙の艦隊」が大好きである)
しかしこの映画は、そういったエンタメ性を廃してリアリティに徹している。
航海が長引くにつれて乗組員の髭が伸びてくる。もうむさ苦しい男たちばかりで、誰が誰やら分からないぞ。
この映画では潜水艦同士の戦いは描かれない。
そんな格好よい場面はなく、敵商船やタンカーを見つけては攻撃し、追ってくる駆逐艦からはひたすら逃げる、といった地味な(リアルな)物語なのだ。
敵の攻撃を受けて、深度計の目盛りを振り切った深さにまで沈降してしまう場面がある。
さあ、この深さから浮上することができるのか。
バッテリーはもう尽きそうだ、潜行するために取り入れた水を排出することはできるのか?
狭い艦内に充満する緊張感は半端ではなかった。
(最後のネタバレ)
厳しい状況をなんとか乗りきって、Uボートはやっと味方基地にたどりつく。
やれやれ、やっと生還できたぜ。
と、その港に敵機が襲ってくる。そして爆撃で艦も艦長もあっさりとやられてしまう。
海の戦いは耐えたというのに、抗いようのない空爆でやられるとは・・・。
皮肉な最後が、戦争というものの虚しさをよく伝えていた。
この映画をドイツが作ったということも意味がある。
エンタメものではない潜水艦映画として、傑作でしょう。