2020年 ドイツ 90分
監督:クリスティアン・ペッツォルト
出演:パウラ・ベーア、 フランツ・ロゴフスキ
大人のファンタジー。 ★★★☆
このポスター写真を見てほしい。
彼に肩を抱かれながらそっと振り返り何かを見つめる女の視線。その不気味なほどの目力。
もうこの写真だけでこの映画鑑賞を決定!
博物館のガイドをしているウンディーネ(パウラ・ベーア)。
彼女は冒頭で恋人から別れを告げられ悲嘆に暮れるのだが、そんな彼女の前に潜水作業員のクリストフ(フランツ・ロゴフスキ)が現れる。
2人は強く惹かれ合い、新たな愛を大切に育んでいく。
原題は「ウンディーネ」。ヒロインの名前でもあるのだが、湖に住む水の精霊の名前でもある。
ウンディーネは、恋する男が裏切るとその男を殺さなければならず、また、恋する男に罵倒されると水に還らなければならないらしい。
映画はこのウンディーネの物語を上手くなぞっていた。
ときどき不思議な映像もあらわれる。
二人で潜った湖の底には沈んだ橋があったりするのだが、その橋脚に”ウンディーネ”と書かれていたり。
ウンディーネが溺れ死んでしまいそうになるぐらい長い間水中にもぐって、助け上げられたり。
監督は「東ベルリンから来た女」のクリスティアン・ペッツォルト。
あの映画も自転車に乗って田舎道を走るヒロインの姿を美しくとらえていた。
この映画でも、どこか謎めいたヒロインを余分な説明をすることもなしにとらえていた。
おだやかな二人の愛の日々だったのだが、ある日、クリストフが潜水作業中の事故に遭ってしまう。
12分間の無酸素状態が起こり、彼は脳死状態になってしまったのだ。
嘆き悲しむウンディーネ。彼女はどうする?
(以下、ネタバレ)
ウンディーネは、やはり人間ではなく、本当に水の精霊だったようだ。
脳死状態となったクリストフを蘇生させるために、ウンディーネは怨念の塊となって、水の精に戻るためにかって自分を棄てた男を水死させる。
そして、彼女は入水して自分が水に還ることでクリストフを生還させる。
現代を舞台にしたダーク・メルヘンのような神話であった。
ちょっと神秘的な独特な雰囲気で、ウンディーネの、自分を犠牲にした悲しいまでの愛を描いていた。
人魚姫の物語を連想してしまった。
パウル・ベーアがベルリン映画祭で主演女優賞を獲っています。