2020年 アメリカ 121分
監督:カリン・クマサ
出演:ニコール・キッドマン
刑事物サスペンス。 ★★★
人気のない郊外での殺人事件。
そこにやって来た女性刑事エリン(ニコール・キッドマン)は紫のインクが付着したドル紙幣を見つける。
居合わせた刑事たちに、エリンは、私は犯人を知っているわよ、とうそぶく。
そう、確かに彼女は犯人を知っていたのだ・・・!
署に戻った彼女あてに差出人不明の封筒が届いており、中には同じようなインクで汚れた紙幣が入っていた。
差出人はあの憎いネイサンだと、エリンは理解する。
彼がまた悪事を企んでいる。おのれ、今度こそ逃がすものかl。
それは彼女の17年前の苦い思いをともなう潜入捜査に関わるものだった。
この映画を見始めてまず驚いたのは、荒んで衰えた顔のニコール・キッドマン。
彼女本来の華やかさとは真逆の容貌、雰囲気。
ここまでの老け顔をさらすとは、いくらメイクだとは言え、ものすごい役者根性があるといえる。
役に賭ける情熱もすごいし、またそれだけの自信もあるのだろう。
時間軸が遡り、17年前に物語は移る。
若く美しいころのエリンは、相棒のクリスと恋人を装って銀行強盗団に潜入捜査をしていた。
強盗団ボスのネイサンは極悪なサイコ野郎。
彼に率いられた強盗団が銀行を襲おうとする。よし、彼らを捕らえる絶好のチャンスだ。
しかし、エリンたち二人は奪ったお金を自分たちでネコババしようとも計画する。
そうなのだ、17年前のエリンも決して正義感溢れるヒロインではなかったのだ。
辛い生い立ちを経験してきている。彼女は、その頃からすでに”野良犬(ストレイ・ドッグ)”だったのだな。
そして強盗団が銀行から奪ったお金には、盗難目印用の紫色インクが付着していたのだ。
恋人のクリスもネイサンに殺され、ひとりエリンが取り残される。
そして今、ネイサンを追い求めるエリン。
酒に溺れているヒロインは疲れ切っており、映画の雰囲気はひたすら暗い。
風貌もそうであるし、きれい事だけではない捜査行動からも、共感できるようなヒロインではない。
もう汚れきったノワール・サスペンスの緊迫感で見せていく作品である。
エリンは自分の未来などは捨て去っており、ただ過去の後悔をぬぐうための執念だけがある。
そしてクリスとの間にできていた娘のことだけを案じている。
果たして、エリンはネイサンを捕らえることができるのか。
(以下、ネタバレ)
まさか冒頭の場面でも時間軸がずれているとは思わなかった。
これにはすっかりやられた。
すると、ネイサンから追跡塗料が染みた紙幣が送られてきたのは、冒頭の殺害の前ということになるわけだ。
しかし、ネイサンがわざわざ紙幣を送ってきた理由が判らんぞ。
なにか、見おとしていたことがあった?
ニコール・キッドマンが受賞はできなかったものの、ゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされた作品です。