2017年 アメリカ 103分
監督:ピーター・ランデスマン
出演:リーアム・ニーソン、 ダイアン・レイン
内部告発者の物語。 ★★★
1974年にニクソン大統領が辞任に追い込まれたのは「ウォーターゲート事件」が原因だった。
それを暴露したワシントン・ポスト紙記者の物語が、ダスティ・ホフマンとロバート・レッドフォードの「大統領の陰謀」だった。
この二人のスクープに重要な役割を果たしたのが、匿名の情報提供者“ディープ・スロート”。
この映画は、その”デープ・スロート”の物語。
ウォーターゲート事件のおよそ30年後に、当時FBI副長官だったマーク・フェルトが、自分がディープ・スロートだと名乗り出ている。
本作はそのマーク・フェルトの自伝を基にしている。
歴史的な内部告発だったのだな。
それにしても、どうしてFBI高官ともあろう人物が内部告発をした?
マーク・フェルトはFBIに大いなる誇りを持ち、組織に忠誠を励む超・真面目人物。
長年FBI長官だったフーバーが亡くなると、長官代理にはニクソン大統領に近いグレイが抜擢された。
そんなときに、民主党本部に盗聴器を仕掛けようとした男たちが逮捕される事件が起こった。いわゆるウォーターゲート事件である。
彼ら犯人に関与した人物、それに資金提供者に元政府関係者の名前が挙がってくる。
情報を収集したフェルトは、これはホワイトハウスが関与しているのでは?と疑う。
しかし、そんなことが公になっては一大事と、ホワイトハウスも黙ってはいない。
グレイ長官代理を通じてフェルトの捜査に圧力をかけてくる。
なに、あと48時間でこの捜査を打ち切れだと?
こんな事が許されていいのかっ! FBIはホワイトハウスからは独立した捜査機関だぞ。
政府の圧力に負けたら、FBIの存在意義がなくなってしまうではないかっ。
リーアム・ニーソンがアクションを封印しての好演。
「96時間」以来、彼はすっかりアクション俳優となっていた。列車の中でも飛行機の中でも大活躍をしていた。
しかしかっては良心の人・シンドラーだったし、高潔なジェダイの騎士だったし、落ち着いた演技派俳優だったのだ。
今作では、背筋をピシッと伸ばして笑うことも忘れたような苦悩の人物を演じている。
強い意志と信念がその皺の増えた顔からも滲み出てくるよう。好い。
このままでは捜査は妨害され、ニクソン大統領の事件への関与はうやむやにされてしまう。
なによりも、FBIがコケにされたままになるっ!(まさか、こうは言わなかっただろうが・・・笑)
そこでフェルトが取った究極の手段が新聞社への情報リークだったのだ。
しかし、もしこのリークの犯人が自分であるとばれたら、自分もただでは済まない。
今までの自分の功績や今の地位を棒に振るかもしれないような行為であったのだろう。
そしてこのリークによって書かれた記事によって、一度は大統領選で勝利したニクソンは辞任に追い込まれたのだ。
内容的には地味な展開の硬派ドラマだったが、緊迫感がずっと続く。
フェルトの人間くさい悩みや葛藤も描かれる。
「大統領の陰謀」や、そして事件は違うがやはり政府の陰謀を暴いた「ペンタゴン・ペーパーズ」を観た人には、この映画はお勧めである。
それにしても、我が国でも検察が調査しながら何となくうやむやになっている事件がいくつもある。
政府が存在を調べようともしなかった赤木文書がやっと公表された事件もある。
ときの総理大臣が都合のいい検事総長を任命して隠そうとしたのではないかと憶測されている事件もある。
日本の検察はどこまで頑張れるのだ?