2019年 フランス 105分
監督:レジス・ロワンサル
出演:ランベール・ウィルソン、 オルガ・キュリレンコ
謎解きサスペンス。 ★★★☆
「デダリュス」という世界的なベストセラーの完結編が各国で出版されることになった。
出版権を獲得した出版社社長のエリックは世界同時出版を大々的に発表する。
そして各言語の翻訳者9人をある豪邸に集め、一斉に翻訳作業を始めさせる。
情報流出を防ぐために、携帯やPCなどの外部との通信機器の使用を禁止し、広大な地下室に監禁して翻訳作業をおこなわせることにしたのだ。
9カ国の翻訳者たち(オルガ・キュリレンコなど)もそれぞれの事情を抱えてこの仕事に応募してやって来ている。
翻訳スタイルもさまざま。
部屋には見張りもいて、しかも出版者からわたされる元原稿は1日分ずつだけ。
小説内容の漏洩防止に神経を尖らせているなあ。
この翻訳家を1カ所に集めて事前に新刊内容が漏れないようにする、というのは実際にあったとのこと。
映画化もされた「ダ・ヴィンチ・コード」で人気を博したダン・ブラウンの新刊発刊の時に各国の翻訳者を缶詰めにして翻訳作業をおこなったとのこと。
この映画はその事実に案を得ているようだ。
さて映画の方は。
ある日、突然、小説の冒頭10ページがネット上に公開される。えっ、どうしてこの小説の内容が外部に漏れたのだ?
もちろん、小説の内容を知っているのは限られた者だけ。
ということは、翻訳者の中に犯人がいるに違いないとエリックは考える。そして調査に乗り出し・・・。
もちろん、9人の翻訳者同士も疑心暗鬼になる。
誰が外部と通じているんだ? 誰が小説の内容を知ることが出来たんだ?
小説の原稿はエリックが大切に鞄の中に入れ、持ち歩いているぞ。誰があの中身を読んだのだ?
オルガ・キュリレンコ扮するロシア語翻訳者は、この原作者の大ファン。
なんとか早く小説の続きを読みたいとエリックの部屋に入り込み、鞄を開けようとする。
鞄を開ける暗証番号は何番かしら? 123? 456? 069? それとも007?・・・
こんなところで007ネタを出してくるのかよ(笑)。
さらに、エリックのもとに、24時間以内に500万ユーロを払わなければ、次の100ページも公開するぞ、という脅迫メールが届く。
えっ、これはどうしたことだ?
そして実際に100ページ分がネット公開されてしまう。
えっ、そんな馬鹿な!
ところどころで、事件の2ヶ月後に刑務所内でエリックが誰かと面会している映像が挟み込まれる。
エリックは、これはお前の仕業だったのか!と怒りに震えている。
しかし画面にはその面会相手の顔は映らない。はたして、エリックが刑務所で面会しているのは誰だったのだ?
この事件の犯人は誰だったのだ?
ワン・シチュエーションの単純なサスペンスものかと思っていたら、いや、やられた。
中盤ぐらいで犯人が明らかになって、あれ、このあとどうするんだろ?と思っていたら、やられた。
これはネタバレは絶対に厳禁な映画。最後まで楽しめる。
(以下、ネタバレ。未見の人は絶対に読んではいけません)
実は、翻訳者たちが屋敷に集められる前から事件は始まっていたのだ。
「オリエント急行殺人事件」ではないが、何人かの共謀者が仕組んでいたのだ。
彼らはまんまとすり替えてコピーを取った原稿で内容を知ることが出来たのだ。
しかし、しかしである。
そこにもう一つのどんでん返しが残されていた。
この事件の真の狙いは・・・、犯人の真の姿は・・・。
ここまで練られた謎解きサスペンスものとは思わなかった。
未見の方は絶対にネタバレ記事を読んではいけませんよ。