1956年 アメリカ 105分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ヘンリー・フォンダ、 ヴェラ・マイルズ
本当に怖ろしい話。 ★★☆
冒頭でヒッチコック監督があらわれて、これは本当に怖ろしい話です、事実に基づいています、との口上を述べる。
その通りに、この映画は実話に基づいた異色のサスペンス。
いつものヒッチコック監督作品に比べて非常にシリアスなものとなっている。
ナイトクラブのベーシストとして働くクリストファー(ヘンリー・フォンダ)。
貧しくて借金をしながらだが、愛妻ローズ(ヴェラ・マイルズ)と二人の子どもと共に平和な生活をおくっていた。
そんな彼がある日、強盗だと訴えられてしまう。えっ?!
まさかそんな馬鹿なことが自分の身に起こるとは普通は思わない。
しかし、勝手に思い込んだ目撃者たちの証言と、強引な警察の取り調べに、善良な一市民はあれよあれよという間にとんでもない状態になってしまう。
家族に連絡を取ることもできないままに警察署に拘留されてしまうのだ。
何の心構えもないままに、留置所に入れられる。
こんなことが自分に起きるとは思ってもいなかったのに、手錠をかけられて移送される。
すぐに身の潔白が明らかになるはずだと思っていたのに、面通しで犯人だと名指しされてしまう。
不条理としかいいようがない。どうしたらいいんだ?
突然、強盗犯に間違えられた生真面目な一市民を、ヘンリー・フォンダが迫真の演技で見せる。
理不尽な出来事に否応なく振りまわされていく戸惑い、恐怖、そんなものが彼のおずおずとした動作、表情であらわされている。
実際にこんな冤罪が我が身に降りかかったらどうしたらよいのだ?と思わせるリアル感がある。
たしかに、本当に怖ろしい。
なんとか保釈金を積んで帰宅したものの、これからの裁判はどうなるのだ?
そして妻のローズが精神的にまいってしまう。
自分のせいで夫は強盗を働いたのではないだろうかという疑惑さえ抱えているようなのだ。
すべて悪いのは自分なのだと自分を責めつづける・・・。
映像は冷酷なまでに淡々とクリストファーやローズを捉えていく。
はたしてクリストファーの無実は証明されるのか。
普通に生活している人がいきなり犯罪者にさせられてしまうという状況を描いて、いつものヒッチコック映画とはひと味異なった冷え冷えとした印象のサスペンスでした。
(この映画では、ヒッチコック監督は冒頭に口上を述べているので作品途中での出演はありません)