あきりんの映画生活

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「チャイナ・シンドローム」 (1979年)

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1979年 アメリカ 122分
監督:ジェームズ・ブリッジス
出演:ジェーン・フォンダ、 ジャック・レモン、 マイケル・ダグラス

原発サスペンス。 ★★★☆

邦画の「天空の蜂」は、原発に何かの想定外事故が起こったときの怖ろしさを考えておかなくてはならないだろう、という警告を発していた。
こちらの映画は1979年制作と、35年も前のもの。
すでにそこで、メルトダウンにつながりかねなかった事故について描いている。

TVキャスターのキンバリー(ジェーン・フォンダ)とカメラマンのリチャード(マイケル・ダグラス)は、原発を取材中だった。
窓越しに制御室を撮影していたその時に、地震による事故が起きる。
それは一歩間違えればメルトダウンを起こしかねない事故だったのだが、原発側はそれを隠蔽しようとする。

タイトルの”チャイナ・シンドローム”とは、もしアメリカでメルトダウンが起きたら、融けた核燃料は地面を溶かしながら地球の反対側の中国まで溶かしてしまうだろう、というブラック・ジョークである。
この映画の公開直後に起こったのが、スリーマイル島原子力発電所事故だった。
この映画はまるで、原発の怖ろしさを予見したようなものとなったわけだ。

キンバリーとリチャードは隠し撮りした原発制御室の様子を専門家に見てもらう。
そして、重大事故が起きようとしていた可能性を示唆される。
張り切ってこれをスクープ記事にしようとするキンバリーたち。
しかし、TV局上層部からの圧力により、そのスクープ記事は握りつぶされる。撮影フィルムも取り上げられてしまう。
原発の危険性が暴露されたら困る人たちがいたわけだ。

原発技師で制御室責任者のゴデル(ジャック・レモン)は、原発の必要性を感じながらも、その危険性も感じ取っていた。
必要な設備の検査が永年にわたり手抜きされていたのだ。
このままでは、本当にメルトダウンを起こしてしまうぞ。
しかし、原発管理者側は、原発は安全だと主張してゴデルの訴えを握りつぶそうとする。

後半は、現状の原発の危険性を一般市民に知らせようとしたゴデルが、制御室に立てこもるという緊迫した状況となる。
全国にTV中継で訴えをさせてくれなければ、この原発の汚染水を放出するぞ。
(もし福島原発事故を経験していなければ、”汚染水”、そしてその放出がどのようなものであるのかを知らない人が多かったのではないだろうか。残念なことに、今や日本中の人がその意味を知ってしまった。)

管理者側はSWATを呼び、なんとしてでもゴデルの情報公開を阻止しようととする。
ゴデルを危険人物に仕立て上げて、その口を封じなければ・・・。
SWAT突入のために制御室の電源を落とせば、実はそのことがメルトダウンを起こす事故の誘因となるのだ。

いったい、どうなる?
このように、この映画も、原発事故の可能性、そして管理者側のそういった危険性の隠蔽、といった問題をとりあげながらも、充分にエンタメ性を残している。

(以下、ネタバレ)
この映画では、ゴデルの必死の言葉により、あわやというところでメルトダウンは避けられる。
しかし、(映画の中だけの話だと思っていた)メルトダウンが、日本では本当に起こってしまった。

映画は、極端な絵空事の事態を描いて問題を提起する。
まさか実際にはそんな怖ろしいことは起こらないだろうと、普通は考える。
しかし、日本はその映画で描かれる怖ろしい状態のもっと先まで、すでに経験してしまった・・・。