あきりんの映画生活

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「去年の冬、きみと別れ」 (2018年) それは狂気か愛か

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2018年 日本 119分
監督:瀧本智行
出演:岩田剛典、 斎藤工、 山本美月、 

猟奇殺人事件を追うサスペンス? ★★★

 

原作は中村文則の同名小説。
叙述で読者を惑わせる部分がかなりあった小説だった。あれをどのように映像化したのだろうか?

 

映画の前半部分は・・・。
結婚を控えた雑誌記者の耶雲(岩田剛典)は、天才カメラマン木原坂(斎藤工)に取材を申し込む。
実は、木原坂は写真撮影中の火災で盲目の女性モデルを焼死させてしまっていたのだ。
しかも木原坂は燃えている女性を助けもせずに撮影していたという噂もあったのだ。
これは面白い記事になるのではないだろうか・・・。

 

耶雲は木原坂の実態を暴こうと取り憑かれたように取材に没頭していく。
そのため、婚約者の百合子とは思いのすれ違いが生じるようになっていく。
すると、木原坂はそんな百合子に接近して、自分の写真のモデルにならないかと誘いかける。
・・・これは危ないのではないかい?

 

小説はいろいろな人物のモノローグで構成されていたので、今話しているのは誰なのか? そして今は何時なのか? がとても読み手を混乱させるものになっていた。
映画ではその辺りは上手く映像化していた。
小説とは登場人物の役割がかなり変わっていたりして、それが映画としての面白さを引き出していた。

 

危惧されたように、木原坂のアトリエは再び火事になり、椅子に縛られたままの百合子は焼け死んでいく・・・。
その様を狂気に取り憑かれたようにカメラに収める木原坂。
・・・映画の前半はこのような物語を映している。

 

しかし、後半になると、これまで見えていた事柄の裏の意味が明かされていく。

 

(以下、ほとんどネタバレ)

 

次第に物語は、主人公の入念に仕組んだ復讐劇だったことが明らかになってくる。
はじめに焼け死んだ盲目の女性モデルは、実は・・・。
二番目に焼け死んだ”百合子"は、実は・・・。

 

このタイトルはとても印象的。
いったいこの言葉の後にどんな文言が続くのだろうと思ってしまう。
映画の終わり近くに主人公のモノローグでそれが明らかになる・・・、「去年の冬、きみと別れ、僕は化け物になった」

 

人間の心を棄てて、きみの復讐を果たしたのだった。
復讐の対象となるひとりを殺し、それは木原ともうひとりの人物がもっとも傷つくような復讐となったのだ。
もちろん小説でそのことは知っていたのだが、映像で観る物語の真相も充分にインパクトのあるものになっていた。

 

小説は大変によくできたどんでん返しもあるサスペンスものだった。
そして映画も、小説とはかなり異なる部分を盛り込んで、映像化に成功していた。