あきりんの映画生活

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「パレード」 (2010年) ルームシェアをする5人の若者たち

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2010年 日本 118分
監督:行定勳
出演:藤原竜也、 香里奈、 貫地谷しほり、 林遣都

ルームシェアの若者たち。 ★★★☆

 

原作は山本周五郎賞を受賞した吉田修一の同名小説。
原作は未読だが、彼の作った物語ならまず間違いないだろう。あとは監督の映像化手腕次第だな。

 

4人の男女がとあるマンションで共同生活を送っている。
大学生の良介(小出恵介)は先輩の彼女に恋をしている。
無職の琴美(貫地谷しほり)は売り出し中の若手俳優と秘かに恋人関係にある。
イラストレーターの未来(香里奈)は酒癖が悪く、おかまバーの常連。
最年長で最古参の直輝(藤原竜也)は、真面目なサラリマンで健康オタク。

 

今の若者ってこんな感じなのだろうか、と思わせて、何となく納得させられる空気感がある。
互いの生活には必要以上に干渉しないことで、共同生活の均衡を保っている。
ある距離を超えて近づいてしまうと鬱陶しいけれど、全くのひとりぼっちは寂しい。
そんな感じを互いに持っているという感じ。

 

映画はその住人に一人ずつ焦点を当てて、章立てで進んでいく。
無駄な説明を省いていて、物語の進行が観やすいものになっている。

 

その頃、町では女性を狙った暴行事件が連続して発生していた。
物騒だよねえ、夜の帰り道は気をつけなくては。
そして男娼のサトル(林遣都)がこのマンションの一室に転がり込んでくる。

 

5人がそれぞれの時間感覚で同じ場所で暮らしている。
そして一人ひとりは皆それぞれの悩み、弱味を抱えているのだ。
互いに相手のそれに気付いても、あえてそれには触れない。
触れるときは冗談にしてしまう。決して本気で相手の生活に関わり合うようなことはしない。
それが今の若者が他人と上手くやっていく知恵なのだろうか。

 

最後の10分あまりで物語は大きくうねる。
えっ、そんなことになるのか。

 

最期のシーン、**が告白しながら泣いてるのを見ても、他の4人はまったく関係のない話をしている。
事件を知りながらもそんなことはなかったことにしようとしている。
そんなことに気づかなければ、今の自分たちの平穏な世界は保てると思っているよう。
平穏な世界をそうやって保とうと、そこにいる全員が思っている。

 

実に不気味なエンディングだった。
さすがに吉田修一原作。ただの若者群像では終わらなかった。
孤独な闇深い話でした。