2019年 日本 129分
監督:瀬々敬久
出演:綾野剛、 佐藤浩市、 杉崎花
閉鎖社会での罪と罰。 ★★★☆
吉田修一の短編集「犯罪小説集」は、犯罪そのものではなく、犯罪に関わる人の心理を描いていた。
この映画はその中からの2つの話「青田Y字路」「万屋善次郎」を結びつけて一つの映画としていた。
原作には5つの短編が収められているのだが、中では「青田Y字路」が一番好きだった。
Y字路で友だち・紡と別れた少女・愛華が行方不明となる。
未解決のまま過ぎた12年後に、同じ場所でまた少女行方不明事件が起きる。
人々の思い込みから、よそ者の豪士(綾野剛)が犯人ではないかと疑われて・・・。
親の介護のためにその村に戻って生活していた善次郎(佐藤浩市)は、村人に頼りにされる存在だった。
しかしある事柄がきっかけで村八分にされてしまう。
善次郎は次第に人間嫌いになり、意味不明の行動を取るようになっていき・・・。
村という閉ざされた生活共同体での人間関係の怖ろしさがよく描かれていた。
助け合わなければ生活していけないような環境なだけに、その輪からはみ出た者にはとても非情になる。
二人の主人公を演じた綾野剛と佐藤浩市は、さすがに上手かった。
罪を犯してその罰を受けていく者、罪を犯していないのに罰を受けさせられてしまった者。
それぞれ、やりきれなくなるような人生なのだが、ああ、そうだろうなあ、と納得させる重みがあった。
しかし、紡、豪士の物語と善次郎の物語の関連が、どうもちぐはぐだった。からみ合っていなかった。
元々は別のものだった物語を舞台をそろえてつなげている。
そのために、3つの章分けにはしているのだが、上手く流れができていなかった。
折角、俳優陣の演技は好かったのに惜しいと思ってしまう。
そんな不満は残るものの、十分に見応えのある作品だった。
いっそうのこと、登場人物はオーバーラップさせずに、まったく別の物語としたら、さらに好くなったのではないだろうか、とも思ってしまう。
どうだろう?