あきりんの映画生活

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「日本で一番悪い奴ら」 (2016年)

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2016年 日本 135分
監督:白石和彌
出演:綾野剛、 中村獅堂、 

悪徳刑事物語。 ★★★

実際に北海道警に勤務していた刑事の告白小説(?)を元にした映画。
主人公の諸星(綾野剛)が新入警察官となるところから、不祥事を起こして逮捕されるまでの26年間を描いている。

酒も煙草もやらない真面目青年だった諸星は要領が悪く、仕事の点数も上げることができないでいた。
そんな彼に、裏社会にもコネを作って羽振りをきかせていた先輩刑事(ピエール瀧)が、仕事の(悪賢い)要領を教えてくれる。
それにしたがって、裏社会に情報屋を作り、顔を売っていく諸星。

綾野剛といえば、「新宿スワン」で水商売のスカウトマンを演じたり、「白雪姫殺人事件」で軽佻浮薄な嫌味な奴を演じたりと、世間的にはコワイ役柄が多い。
私は実は「奈緒子」という、駅伝に頑張る若者を描いた映画で見てからのファン。

その映画の主人公のライバルが綾野剛だったのだが、彼の走るフォームがとてつもなく素晴らしかった。
他の出演者に比べて一人だけ本格的で、はじめは本物の陸上選手が起用されたのかと思っていた。
後になって知ったのだが、彼は中学高校と陸上をしており、800mで県大会優勝し、駅伝で区間賞を取ったりしていた。アスリートだったのだ。
すっかり綾野剛を見直して、それ以来のご贔屓なのである。

さて。
やがて諸星はススキノの繁華街を肩で風を切って歩くようになる。
諸星が通ると、ぽん引きやチンピラたちが頭を下げ、水商売の娘たちが媚びを売る。
服装のガラがだんだんと悪くなり、全身から発散する雰囲気も、知らない人が見たらまるでヤクザそのもの(笑)。

このあたりは一種の成り上がり物語風。
しかも、その変化を諸星の主人公目線で見ているものだから、観ている者にも快感となるあたりが、自分でも恐い。

少々あくどいやり方だろうが覚醒剤を摘発すれば点数は上がり、警察内での評価が上がる。
背中に入れ墨のあるようなワケあり美女とも、懇ろな仲になる。
今や煙草を吹かし、酒も飲むようになっている。
もう、矢でも鉄砲でも持ってこい状態。悪いことをしているとの自覚もなしに、ずるずると深みにはいりこんでいく諸星。

諸星がつるむヤクザ幹部に中村獅堂。
こりゃもう誰が見たってヤクザ幹部でピッタシの風貌。近寄るだけでも恐いよお。
諸星が利用するチンピラとか古売屋とかも、実際にこんな事をするのだろうなあ、と思わせるリアリティがあった。

映画は警察全体にはびこっている悪の構図も描いている。
とにかく警察は覚醒剤を摘発し、チャカ(拳銃)を押収して、数字になる業績を上げないといけないわけだ。
その結果を出すためには(少々の違法性があろうが)手段は問わないわけだ。

そして世間を騒がせた、いわゆる”稲田事件”へと繋がっていく。
詳細は映画を観てもらうこととして、これにより諸星は失脚し逮捕される。
彼の弁護を引きうけた弁護士が接見するのだが、そのときの諸星の北海道警に対する台詞が、ある意味で恐ろしい。
そんな台詞を言うのか諸星よ、哀れだぞ。
そして、映画のタイトルは「悪い奴」ではなく、「悪い奴ら」と複数形なのだ。

ピカレスク物として、物語の面白さもあり、迫力もあった。
綾野剛が熱演。脇役陣も熱演。
お勧めできる映画でした。