あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「ゴースト・イン・ザ・シェル」 (1995年) アニメ版・攻殻機動隊

f:id:akirin2274:20220216230227j:plain

1995年 日本 80分
監督:押井守
(アニメ)

革新的なSFアニメ。 ★★★☆

 

士郎正宗の同名コミックの映画化。監督は「パトレイバー」を撮っていた押井守
私はアニメはほとんど見ないのだが、「マトリックス」に影響を与えたことでも有名な作品、ということで鑑賞。

 

西暦2029年、高度に発達したネットワーク社会が舞台。
ヒロインは、多発するコンピューター犯罪やサイバーテロに対抗するための超法規特殊部隊「公安9課」(通称「攻殻機動隊」)の草薙素子
実は素子は脳だけが生身の肉体で、その他の身体はすべて人工物、つまり擬体だった。

 

緑色に横に流れる文字画面。これを縱に流せば、あの印象的だった「マトリックス」のオープニング画面である。
擬体の首の辺りは機器につなぐためのプラグがある。これも「マトリックス」でも使われていた。
攻殻機動隊」の漫画原作が91年、このアニメ映画が95年。そして「マトリックス」は99年の映画である。
このアニメにウォッシャウスキー兄弟がどれだけ影響を受けたかがよくわかる。

 

さて物語は。
ある日、某国情報筋から、国際手配中の凄腕ハッカー・通称「人形使い」が日本に現れるとの情報が入る。
人形使いは他人の電脳を乗っ取ってその人物を繰るという、大変に危険な存在なのだ。
隊長の素子たち公安9課が人形使いの痕跡を追うと、人形使いがのっとっている女性サイボーグに行き当たる。

 

この作品では”ゴースト”という概念が出てくる。
通常はゴーストと言えば幽霊と思ってしまうところなので、いったい何をあらわしているのだろうと不思議だった。
どうやらこの言葉の語源はもっと深いところに在り、その人の記憶とか感情の源とか、いわば魂のようなものを指しているようだった。

 

そして、そのゴーストがその人のアイデンティティを支えているようだ。
すると記憶を改変する、あるいは記憶を交換してしまったら、その人は誰になってしまうのだろうか。

 

この人形使いの身体は、脳までも完全にサイボーグであり、その思考は電脳でおこなわれている。
思考のみならず、感情も電脳によって作り出されているのだ。
彼は自らをネットの海から生まれた生命体だと主張する。
そして亡命を希望する。

 

かつて地球の原始の海では、漂っていた元素からアミノ酸が生まれ、タンパク質が生まれた。
それらが有機的に結合して初めの生命が生まれたわけだ。
それと同じように、無数の情報が漂っている電脳の海で、ある情報が有機的に結びつけば生命が生まれるかもしれない。
そう考えると、人形使いが生命体だと考えてもいいのかもしれない。なるほど。

 

未来都市として描かれる街風景は古い香港を擬していて、どこか懐かしさを感じさせるものになっている。
そして素子たちと襲撃者の未来戦車を用いての戦い場面も、充分に満足のいくものだった。

 

素子は人形使いとの融合をはかり、一度は破壊されながらも新しい擬体の中で生きていく。
未来アクションSFアニメでありながら、その一方で大変に哲学的な命題も提示している物語だった。