2019年 ブラジル 131分
監督:クレーベル・メンドンサ・フィーリョ
出演:ソニア・ブラガ、 ウド・キア
ある村の荒々しい物語。 ★★★
ブラジル映画といえば、一番に思いうかべるのは「黒いオルフェ」ではないだろうか。
個人的には「シティ・オブ・ゴッド」が印象的だった。荒削りで、ぐいぐいとこちらに迫ってくるものがあった。
そうなのだ、私がブラジル映画に対して抱いているイメージは、洗練とは無関係の粗野、しかし圧倒的な力強さ。
この映画もその感じだった。
舞台となるのは小さな村バクラウ。
村の長老が亡くなり、村中総出での葬儀がおこなわれる。みんなが顔見知りの小さな村なのだ。
そんな村に、時折り、派手な鳴り物入りで街から市長がやってくる。再選を狙っての宣伝活動なのだが、どうにも鼻持ちならない奴。
しかし、この市長のおかげで村の水源が駄目になったようで、村人とは対立している風でもある。
どういう村なのか、その設定は曖昧なままにされている。
素朴な村人なのだが、なにやら排他的で、村全体がなにかの秘密を抱えているような雰囲気を醸し出している。
はて、この村に何が起きるのだ?
そのうちに、あれ? この村がインターネットの地図から消えているぞ。どうしてだ?
村へ水を運んできた給水車が何者かに狙撃されたぞ。誰がこんなことを?
ついには、少し離れたところの牧場に暮らしていた人たちが撃ち殺されているぞ。えっ?
ぶっきらぼうな感じで、物語がどんどん展開していく。
村人の頭上をUFOまで飛び出したぞ・・・。
この映画はオカルトものだったのか?と思ったら、それは近くに潜んでいる謎の殺し屋集団が飛ばしたドローンだった。
そう、殺し屋集団が、なぜか、村人全員の殺害を計画していたのだ。
はじめにも書いたが、この映画に洗練さはない。
村人は開けっぴろげに男女の営みをおこなうし、全裸の男性の股間もそのまま映る(ちなみにR15指定)。
後半になるにつれて、人はばんばんと死んでいく。
荒削りな物語がそのまま差し出されてくる。その迫力で見せる。
(以下、ネタバレ)
なにかこの村には神秘的なことが起こるのか、とも思っていたのだが、違った。
状況は非常に現実的で、村人が邪魔になった市長が傭兵部隊を送り込んで全員殺害を命じていたのだ。
なあんだ、そんなことだったのか。
しかし、そこからの村人たちの反撃がすさまじい。
村人は一致団結して、村の歴史資料館に展示されていた様々な銃を手にして戦い始めるのだ。
襲ってきた傭兵たちを次々に返り討ちにしていく村人たち。
(ツッコミどころとしては、傭兵たちの間の抜けた攻撃。村人を舐めきっていたせいもあるのだろうが・・・)
こうして村を乗っ取ろうとしていた市長一味を完膚なきまでにやっつける村人たち。
市長(白人)も、傭兵たちの首領(欧州人)も、とんでもない目に遭わされる。
ざまあみろ、白人たちめ。この村は誰にも渡さないぞ。
しかし、いろいろな意味ありげな伏線は回収されないまま。
村人たちがみんなで飲んでいた謎の薬は何?
近くの山に潜んでいた反政府ゲリラのような若者はどういういきさつだった?
だいたいが、歴史博物館を持っているようなこの村は何だったんだ?
そんな細かいことに目くじらを立ててはいけません。この勢いで、この映画は好いんだっ!
カンヌ映画祭で審査員賞を受賞しているとのこと。へぇ~、これが・・・。