あきりんの映画生活

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「嘆きのテレーズ」 (1952年) 巨匠マルセル・カルネ作品

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1952年 フランス 102分
監督:マルセル・カルネ
出演:シモーヌ・シニョレ

不倫サスペンス。 ★★★

 

テレーズ(シモーヌ・シニョレ)は、病弱なくせに傲慢な夫カミイユ、それにその息子を溺愛する姑との生活に嫌気がさしていた。
そんなある日、夫が家に連れてきたトラック運転手ローランに惹かれてしまう。ローランもまたテレーズに一目惚れ。
二人が出会って直ぐに惹かれ合うこの場面は、二人の顔の表情、目の動きなどで見事に表現されていた。さすがにマルセル・カルネ監督。

 

原作はエミール・ゾラ「テレーズ・ラカン」(未読)。調べてみるとシモーヌ・シニョレが演じたテレーズとはかなり異なる人物像のようだった。
そこが映画化される意味でもあるし、楽しさでもある。
モノクロの画面は美しく、色がないことによってかえって物語性が豊かに思えてしまうのは、今の時代の目で見ているせいだろうか。

 

さて、惹かれ合った二人は密会を重ねるようになる。
まあ、不倫に走ってしまったテレーズには同情してしまう境遇もあった。
なにせ夫が駄目。体が弱いので何もしようとしない。それでいてテレーズに文句ばかり言って女中のように使う。
さらに駄目なのが同居している義母。これが息子の為だけに生きているような過保護な母。
事あるごとにテレーズにねちねちと嫌みを言って責め続ける。
こんな二人との生活からは逃げ出したいよなあ。

 

当然のことながら事件は起きる。
駆け落ちをしようとした二人に逆上した夫は、テレーズを監禁しようとして夜行列車でパリの親戚宅に向かう。
二人を追いかけて列車に乗り込むローラン。
そして争いのはずみで夫を列車のデッキから突き落としてしまう。
うわあ、どうしよう!

 

映画はここから面白くなる。
犯行を隠蔽しようとする二人の目論見は上手くいくのか。警察の調べにどこまでもしらを切るテレーズ。
しかし、息子の死に失語症になってしまった義母は怖ろしい目力でテレーズを責め続ける。おまえが可愛い私の息子を殺したんだろ、私には判っているんだよ。
この義母は本当に怖ろしい。後ろ暗いところがあるだけにいたたまれなくなるよ。

 

さらに夜行列車に乗り合わせていた復員水兵が、俺は真相を知っているぞ。バラされたくなかったら金を払え。
おお、脅迫者まであらわれてしまったよ。どうする?

 

(以下、ネタバレ)

 

最後、口止め料も払って事態は無事に収まるかと思ったのに…。
ここから、あっ!という突然の展開になる。
そしてなにも事情を知らない女が水兵に託された告発状を投函する。何とも皮肉な結末となっていた。

 

この時代のモノクロ・フランス映画は実に好い雰囲気を持っている。
シモーヌ・シニョレはこの映画の時は31歳。少し物憂い風情を漂わせていた。
のちに米国アカデミー賞英国アカデミー賞カンヌ映画祭で主演女優賞をとっていて、イブ・モンタンの奥さんだった。知らなかったなあ。