2021年 アメリカ 139分
監督:トム・マッカーシー
出演:マット・デイモン、 カミーユ・コッタン、 アビゲイル・ブレスリン
娘を思う父親の奮闘。 ★★★
留学先のフランスで殺人罪に問われて収監されているアリソン(アビゲイル・ブレスリン)。
そんな娘の冤罪を晴らそうと、ビル(マット・デイモン)はアメリカからマルセイユにやってくる。
田舎町の肉体労働者だったビルは、もちろんフランスでは言葉も通じない。
どうやって娘の無実を証明する?
かっては記憶喪失の無敵のスパイ役を演じていたマット・デイモンだが、本作では無骨な父親役。
娘のためにフランスで頑張るといっても、96時間で問題を解決するどこかの無双親父とは違って、今作の父親は落ちぶれたブルーカラーの父親。
しかし、彼の娘を思う気持ちは純粋で、誰にも負けないぞ。
困り果てたビルを助けてくれたのがシングルマザーのヴィルジニー(カミーユ・コッタン)。
移民である彼女もフランスで必死に生活しているのだが、言葉の通じないビルのために通訳をかってでてくれる。
彼女の助けのもとに、事件の目撃者などに話を聞きに行くビル。
いつも野球帽をかぶってあごひげを蓄えたマット・デイモンは、ブルーカラーの粗野な人物像を巧みに演じていた。
短絡的な思考で闇雲に行動してみたり、怒りの衝動を抑えられなかったり。
かたや娘のアリソンはあまり感情移入のできない人物像だった。
折角フランスまで来てくれた父親をののしってみたりする。
同性愛の恋人を殺したとされているアリソン、本当に無実なのか?
ビルを助けてくれるヴィルジニーが本当に好い人。善意の塊のような人物。
そしてヴィルジニーの幼い娘がとても愛らしい。可愛い。
ヴィルジニーとも恋人関係のようになって一緒に暮らし始めるビル。
もうこのまま不良娘のことは置いておいて、新しい親子で暮らしたらどうなのだ?と、つい思ってしまったぞ。
でも、父親としては、邪険にされても娘のことはほおっておけないんだよな。
スティルウォーターってどういう意味だろう?と思っていたのだが、ビルが住んでいたオクラホマ州にある地名だった。
冒頭で、5年前のビルが土産物屋でスティルウォーターの文字をデザインした金のネックレスを買う場面があった。
ちゃんと土産物になるほどの地名だったのだ。
そしてこのネックレスがラスト近くで大きな意味を持ってくる。
(以下、ネタバレ)
ビルが冴えないままになりふり構わず頑張り、アリソンの冤罪がはれる。
最後、スティルウォーターに戻っての生活を始めたビルやアリソンの様子が描かれる。
言葉少ない会話を交わす父娘。
真実を知ってしまったことをそれとなく娘に告げる父親。
いささか苦いものを残る結末だった。
浮ついたところのない、しっかりしたサスペンスものでした。
マット・デイモンの役者の幅が広がったなと思わせる作品でした。