あきりんの映画生活

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「スターリンの葬送狂騒曲」 (2017年) ソ連の権力争いコメディ

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2017年 イギリス 107分
監督:アーマンド・イアヌッチ
出演:スティーブ・ブシュミ、 オルガ・キュリレンコ

ポリティカル・コメディ。 ★★

 

今、世界が揺れ動いている元凶となっているロシア。今だからこそ鑑賞しておこうかと・・・。
ソ連当時の独裁者スターリンが急死した後の後継者争いを皮肉に描いたコメディ映画である。

コメディといっても、明るく楽しいことは全くない。
政治って、こんな馬鹿馬鹿しいことで動かされているのか? 
誇張されているとはいえ、こんな類いのことが現実におこなわれていたことが本当に怖ろしい。

 

ソビエト連邦連邦共産党書記長スターリンは絶対的な権力を持っていた。
ちょっとでも彼の機嫌を損ねればすぐに粛正されてしまうのだ。
取り巻きたちも粛正を怖れて、もはや通常の判断はできなくなっている。

 

スターリンに嫌われたら終わりなので、どんな話題がうけたかをメモするという、もう漫画のような馬鹿馬鹿しさ。
忖度の極みである。某国のトップに対する忖度も一時は酷かったが、さすがにこんなことはなかったのだろう(と信じたい)。
ソ連でもまさか本当にここまでのことはなかったのだろうが、ひょっとするとあり得たかもしれないなと思えてしまうところがソ連の(そしてロシアの)怖ろしいところ。

 

そんなスターリンは1953年に自室で倒れ、集まった側近たちが右往左往するうちに死んでしまう。
優秀な医者はみんな反体制だというので粛正してしまい、残っていたのは藪医者ばかりだったので、まともな治療も出来なかったというあたりは皮肉そのもの。

 

さて、そうなると側近たちはスターリンの後釜を狙って姑息な権力闘争を始める。
人民委員部の最高権力者のベリヤは、スターリンの恐怖政治を支えて粛正をおこなってきた人物。
フルシチョフ(スティーブ・ブシュミ)は党委員会第一書記だった。
この二人が対立するのだが、どうやら当初はベリヤの方が権力の座には近かったようだ。
ベリヤはマレンコフを書記長代理に仕立ててこれを操ろうとする。

 

このあたり、名前は聞いたことがあったのだが、どんな人物だったかまでは知らなかったので、勉強になった(苦笑)。
やがてフルシチョフはベリヤと対立する軍の最高責任者ジェーコフと手を組む。
もうどす黒い思惑が交差するドタバタ劇。
しかもそのドタバタ劇には情け容赦なく処刑劇が付いてくるのだからすさまじい。
並の神経でこんな政治闘争はやっていられないぞ。
(だから並の神経ではない奴ばかりが権力に群がっているのだな)

 

足の引っ張り合いをして(国民はどこに行ってしまった?)、一度は後継者と目されたベリヤは失脚する。
ベリヤは裁判を受けることもなく銃殺され、ガソリンで焼かれてしまう。
その後、ソ連共産党中央委員会がソ連の最高機関となり、フルシチョフが最高権力者になったのだった。

 

当時の権力者たちをコケにしまくったコメディ映画だったが、まったく楽しくはなれなかった。
というのも、ソ連(ロシア)をいくら茶化しても現実にこんな怖ろしいことをする国になってしまっているのだから。

 

今のプーチン政権も基本的にはここに描かれたような世界なのだろう。
彼の思惑一つで、今でもリストに載れば直ぐに粛正されてしまうのだろう。
権力の座にあるプーチンを誰も止めることができない構図になっていることが、本当に怖ろしい。

 

もちろんロシアやベラルーシでは上映禁止になった映画です。