2020年 台湾 119分
監督:チェン・ユーシュン
出演:リー・ペイユー
ちょっと変わった恋愛ファンタジー。 ★★★
郵便局で働くシャオチー(リー・ベイユー)は小さい頃からせっかち。
いや、せっかちというよりも、すべてのことに他の人よりワンテンポ速く行動してしまう。
彼女には1秒先に起こることの予知能力がある?
それはそれですごいことだと思うのだが、そんな彼女は仕事も惰性、恋にも縁のない日々を送っていた。
ヒロインは初めて観た人だったが、それほどの美人というわけではない。
どこかドジな、しかし愛敬のある役柄には、憎めない感じでちょうど合っていた。
そんな彼女は街で知り合ったイケメン・ダンス講師に一目惚れ。しかも彼も自分に好意を抱いてくれている?
二人は七夕バレンタイン(台湾にはこんなのがあるんだ・・・)にデートの約束をする。やったわよ!
張り切ってデートに出かけようとバスに乗り込んだシャオチー。
しかし彼女が目を覚ますと、既にバレンタインの翌日になっているではないか。おまけに変な日焼けまでしている
えっ、これはどうしたこと? 何が起こったの?
シャオチーは気づいていなかったのだが、実は彼女に片思いをしている男がいた。
それが、彼女とは逆に、いつもすることがみんなよりワンテンポ遅れるバス運転手のクアダイ。
そんなクアダイにチャンスがやってくる。なんと、彼以外の人の時間が止まったのだ。
クアダイが運転していたバスに乗っていたシャオチーも静止している。
おお、これは・・・。
この静止した時間を利用して彼女とデートしよう!
クアダイは彼女だけをバスに乗せて海岸に出かける。そして動かない彼女と2人だけのデートを楽しむ。
ここからのクアダイの思い出写真撮りがなんとも楽しい。
あんなポーズで撮ってみたり、こんな場面を作って撮ってみたり。
(大方の男性が夢見るような(イヤらしい)ことはまったくしませんよ 汗)
しかしよく考えれば、これはストーカーが自分の夢を叶えたお話ではないか。
でも不快ではなかったのはクアダイの恋心がとても純粋だったから。
そしてシャオチーが彼の行為をきっと受け入れるだろうなと思わせるおおらかさの持ち主だったから。
クオダイ以外の人々の時間が止まった説明も一応されていた。
いわく、彼が常に周りから1秒ずつ遅れていたので、その溜まった遅れを取り戻すために他の人の時間が止まった・・・。
ふ~ん、そうだったんだ・・・。
好い感じの挿話になっていたのが、失踪したままのシャオチーの父親の話。
ちょっとしたものを買ってくると言って家を出たきり、父親は帰ってこなかったのだ。どうして?
その父親とシャオチーは街で再会する。
ほら、これを買ってきたぞ、と言って父親はまた立ち去っていく。
不可解な、呆気にとられるような父親なのだが、なにかほのぼのとしてくるものがあった。
原題は「消えた私のバレンタインデー」といったことのようだ。
この邦題はちょっと意味不明ではあるが、興味を持たせるには十分なものになっていた。
憎めない痴漢オヤジが登場したりもしますが、基本的にみんな善人。
(ただ、あのダンス講師だけはなにかよからぬ事を企んでいたように思えるぞ。)
ほのぼの、にっこり。そんな後味のファンタジー映画でした。