あきりんの映画生活

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「その夜の侍」 (2012年) 対照的な二人の人生が交差する

2012年 日本 119分
監督:赤堀雅秋
出演:堺雅人、 山田孝之、 綾野剛

気弱な執念男の復讐劇。 ★★☆

 

奇妙なタイトルと、主演の二人に惹かれて鑑賞。
ある劇団が演じた同名戯曲を、その劇団で作、演出をおこなっている赤堀雅秋が監督となって映画化したとのこと。

 

鉄工所を営む中村(堺雅人)は、5年前に妻をひき逃げ事件で失った。
彼は、今も妻の遺骨を傍らに置き、事件の直前に妻がかけてきた留守番電話の声を聞き続けている。
のうのうと生きている犯人が許せない、あいつを殺して自分も死のう・・・。

 

度の強そうな眼鏡をかけた堺雅人は、いかにも気の弱そうな、しかし思い込んだら取り憑かれてしまいそうな、そんな人物像を巧みに演じていた。
観ているこちらが苛々してくるほど。

 

かたや、ひき逃げ犯人で一応の服役をして出所している木島(山田孝之)は、もう粗野で乱暴。
自分の欲望だけで周囲を怒鳴りつけて生きているような人物。
ふてぶてしい山田孝之を観ていると、お願いだから自分の生活には入り込んでこないで欲しいと思わせる。こちらも上手い。

 

そんな木島に痛めつけられ半死の目に遇わされながらも彼に従う男(田口トモロヲ)がいるかと思えば、陵辱されたのに彼を慕うようになる女(谷村美月)もいる。
木島がヤバい人物だと判りながらも彼の心配をする弟分(綾野剛)もいる。
木島は、悪のカリスマなのだろうか。

 

木島の元へは8月10日(中村の妻の命日なのだ)にお前を殺すというというメッセージが毎日届いている。
中村はその日に備えて、包丁を鞄に入れて木島の後をつけ様子を探り続ける。

 

映画は、過去にとらわれておどおどとした生活を過ごす中村と、傍若無人に刹那的に生きる木島を交互に映していく。
対照的な二人は、妻を殺された男と殺した男という接点でつながっている。

 

クライマックスは中村が木島を殺すと予告した嵐の夜。
それぞれ包丁を持った二人は激しい風雨の中で対峙する。
雨でびしょ濡れになり泥まみれになりながら争い続ける二人。
二人にとってどんな状態が最良の着地点になるのだったろうか?

 

登場人物たちの心情は、主役二人を始めとして、綾野剛にしても田口トモロヲにしても谷村美月にしても、ほとんど理解不能だった。
共感度はどの人物に対してもまったくなし。
しかし、それぞれの俳優たちの演技はすごかったので、つい引きつけられて観終わった。
安藤サクラもデリヘル嬢として登場。下着姿で歌を歌ってくれます。)

 

観終わっても、結局「侍」が何を指しているのかはよく判らなかった(苦笑)。
仇討ちを誓って相手と対峙した中村を「侍」と見立てたのだろうか?

 

しかし、あまりそういった潔さは感じられなかった。
妻への哀切にとらわれ続けた中村、そして自己の欲望に負け続けている木島、二人の弱い人間の感情のぶつけ合いだった。
最後、中村が妻の留守電話の録音を消去したところがわずかな救いだったか。