2011年 イギリス 124分
監督:ジョン・マッデン
出演:ジュディ・デンチ、 ビル・ナイ、 マギー・スミス
異国での人間ドラマ。 ★★★
インドといえば“神秘の国”。そこの高級リゾート・ホテルでの穏やかで心地よい日々。
そりゃ誰でも惹かれるよな。
ということで、老境に入りかけているイギリスの男女7人が余生をインドで過ごそうと考える。
彼らがそれぞれ見つけたのは、マリーゴールド・ホテル。高齢者向け長期滞在用ホテルだった。
インドくんだりまでやってくるのだから、みなそれぞれに悩みや事情を抱えている。
イブリン(ジュディ・デンチ)は、亡くなった夫の残した負債を返済するため家を売り払い、インドでの一人暮らしを決意した。
退職後に家を買うつもりだったダグラス(ビル・ナイ)とジーンの夫婦は、予算の都合で国内では買えずにインドを選んだ。
足の骨折手術を安くおこなうために嫌々インドへやってきた人種差別の塊のような女性(マギー・スミス)もいた。
そんな個々の事情はともかく、彼らが空港からバスに揺られてたどり着いてみると、そこは高級リゾートではなく、改装中のオンボロホテルだったのだ。
えっ、なに、これ?
部屋の中はほこりだらけだったり、外から鳥が入り込んだりしている・・・。
父親から受け継いだホテルを一人で切り盛りして、なんとか経営を立て直そうとしているのが若者支配人のソニー(デブ・パデル)。
彼がほんわかとした好い味を出している。
どこかで見た顔だなと思っていたのだが、2008年の映画「スラムドッグ・ミリオネア」の主役の子だった。
本作の後には「LION ライオン 25年目のただいま」や「ホテル ムンバイ」にも出ていた。
インドの売れっ子俳優なのだろう。
私事になるが、インドにはある団体の一員として10日間ほど旅行したことがある。
インドのスケールを外したような混沌とした活気には、完全に圧倒されたものだった。
日本での時間に縛られた生活、細かい約束や決まり事、そんなことを捨て去った生き方を教えられるようだった。
恐るべし、インド!
さて。
やって来た彼ら7人も次第にインドの生活に慣れて楽しむようになる。
イヴリンは接客のノウハウを教える講師になったりする。
若い頃にインドで暮らしていたある人は旧友を訪ねあてたりする。
夫婦でやって来たダグラスは好奇心旺盛に街を歩き回り、古い寺院を見学する。
しかし、インドの生活になじめない人もいたのだ。
ダグラスの奥さんのジーンは一歩もホテルから出ようとせずに、不満ばかりを募らせていく。
ああ、この夫婦はどうなるんだろう?
老いらくの恋物語も絡んでくるところは、イギリス映画らしかった。
そしてインド人を根っから嫌っていたマギー・スミスが、現地の人たちとふれあううちに柔らかくなっていく様子はよかった。
ついにはソニーを助けて、オンボロ倒産寸前ホテルを建て直す一番の戦力になっていく。
印象的だった台詞は、「何もかも最後にうまくいく。もしうまくいっていなければ、それはまだ終わりじゃないということ」
なるほど、こう考えれば、上手く行くまで頑張ることができるな。
いろいろな人生の断片を見せて、温かい気持ちで見終えることができた。
この映画は続編も作られている。
さて、彼らのあれからのインド生活はどんな日々になったのだろうか。