1998年 イタリア 94分
監督:ベルナルド・ベルトリッチ
出演:タンデイ・ニュートン、 デビッド・シューリス
重厚な恋物語。 ★★★☆
アフリカのある国で、シャンドライ(タンディ・ニュートン)の夫は政治活動で逮捕されてしまう。
ローマへやってきた彼女は、住み込みの使用人として働きながら医学の勉強をする。
屋敷の主人は寡黙なピアニストのキンスキー(デビッド・シューリス)。
彼はやがて肌の色の違うシャンドライに強く惹かれていく。
それぞれが屈折したものを抱える男女の恋物語である。
単純には割り切れないそれぞれの思いが、古い重厚な屋敷を舞台に絡み合う。
それをベルトリッチ監督が余韻のあるタッチで描いている。
ある日、気持ちを抑えきれなくなったキンスキーはシャンドライに愛を告白する。
しかし、激しく動揺した彼女は「じゃあ夫を刑務所から出して!」と叫ぶ。
そうか、君にはご主人がいたのか・・・。知らなかった、許してくれ。
はじめのうちは、シャンドライになんとかして近づこうとするキンスキーが、なんか陰気なストーカー体質の嫌なやつだな、と思いながら観ていた(汗)。
でも、違った。
彼は本当にシャンドライを愛していたのだ。
彼女が幸せになれるのだったら、僕のこの生活を失ってもいい・・・。
シャンドライが知らないところで、彼はとても無償の行為をしてくれていたのだ。
舞台となる古い屋敷にはらせん階段があり、二人がそれを上り、降りる場面が幾度となく映る。
映画前半には屋敷内にはたくさんの骨董品も飾られていて、豪華で重々しい雰囲気を出していた。
キンスキーが一日中引いているピアノの音がそのらせん階段に響く。
そしてその屋敷の調度品は次第に減っていったのだ・・・。
ヒロインを演じたタンディ・ニュートンが大変に魅力的である。
くるりとした瞳が、純真で一途。そして思わぬ恋心に揺れ動くのである。
彼女は2年後に、トム・クルーズの「MI:Ⅱ」でイーサン・ハントの恋人役に抜擢されたのだった。
愛する女性の夫を取り戻すために尽力を尽くす、といえば、先日観たラッセル・クロウ、メグ・ライアンの「プルーフ・オブ・ライフ」と同じ構図である。
しかし男女の気持ちの屈折さはかなり異なる。
ベルトリッチ監督だけあって、こちらの方がよりエモーショナルだった。
(あちらは基本的にはアクション映画だったしね 苦笑)
(以下、最後のネタバレ)
夫が釈放されてローマに着いた早朝、裸身でベッドから起き上がったシャンドライが迎え入れた男は、どちら?
彼女が流した涙の意味は果たして?
観ている者にその後の展開をゆだねている。
どちらもあり得るよなあ。