2022年 日本 121分
監督:成島出
出演:役所広司、 吉沢亮
現代日本の世情を背景にした人間ドラマ。 ★★☆
主人公は、山奥に窯を築き、独りで暮らしている焼き物職人の誠治(役所広司)。
奥さんは亡くなり、ひとり息子はエンジニアとして海外のプラントで働いている、という状況。
息子はアルジェリア人の妻を連れて帰省してくる
そしていざこざに巻き込まれたブラジル人青年が逃げてくる。
この映画は、現代の日本に存在する外国人問題を取り上げている。
息子の妻は、アルジェリアの紛争で両親を失った孤児である。
ブラジル人青年は虐げられている。この地方を牛耳っている反グレ集団に目を付けられ、麻薬の密売を強要されたり、恋人を奪われそうになったりする。
誠治はぶれない態度で息子を支え、ブラジル人青年に手を貸す。
寡黙でぶっきらぼうだが欲得もなく、ただひたすら焼き物を作っている、という人物像を役所広司が自然体で演じている。
上手いものだ。彼はどんな役でも自然体を感じさせてくれる。
また、共に施設で育った彼の幼なじみの警察官に佐藤浩市。
二人が窯近くの椅子に座りお茶を飲みながら会話する場面がある。
何でもないような場面なのだが、この二人が並んで座っているだけで存在感があった。
ブラジル人に異様な憎しみを抱いて悪事を仕掛けてくる悪役半グレ役にMIYAVI。
本職はラッパーとのことだが、実に憎々しげで怪演だった。
彼にもファミリーを失っていたというそれなりの背景を持たせていたのはよかったのだが、ちょっと無理矢理感があった。
それに、娘が愛用していたピンク色の水筒はあざとすぎたのではないだろうか。
物語としては、いささかいろいろなものを詰め込みすぎた感があった。
息子の背景を広げすぎない方がすっきりしていたのではないだろうか。
しかしそうすると、次に述べる不満がさらに大きくなってしまうきらいはあるのだが。
そうなのだ、途中から、この展開はひょっとしたらクリント・イーストウッド監督の「グラントリノ」ではないか?と思っていた。
(映画の前半で、誠治さんは若い頃はずいぶん無茶なこともしていた、という話もあったし・・・ あれ、伏線だったよね)
そしてその通りになっていった。
ちょっとがっかり。せっかく役所広司が好い演技をしていたのに、あの映画と同じ展開にするのかよ。
最後、新しい家族の誕生、というのもとってつけたような感じだった。
せっかくの問題提起があったのに、活かせていなかったのは、残念だった。