1982年 イギリス 117分
監督:ガイ・ハミルトン
出演:ピーター・ユスティノフ、 ジェーン・バーキン、 マギー・スミス
王道の謎解きサスペンスもの。 ★★★☆
ご存じアガサ・クリスティ原作のエルキュール・ポアロもの。
多くのクリスティ映画の中でも名作の誉れが高いこの作品、そのように評価されるだけのことはあった。
舞台は地中海に浮かぶ絶壁だらけの孤島の、ただ1軒だけの高級リゾートホテル。
外部からは閉ざされた舞台で、役者はみんな最初からそろっている。
被害者も犯人も容疑者も、そして探偵も、この中にいるんですよ、途中から掟破りの人物が登場するなんてことはありませんよ、という王道の設定である。
ホテルの宿泊客たち、それにホテルの女性オーナー(マギー・スミス)も、みんなアリーナという女優に何らかのつながりを持っている。
このアリーナ、自分が花形で皆の注目を一身に集めていないと気が済まない派手な(高慢な)女性。
で、当然のことながら、みんな彼女に何らかの恨みを持っているわけだ。
地中海の明るい陽光、透明度の高い青い海。
そしてホテルから離れた人気のない浜辺で絞殺されたアリーナが発見される。
ホテルの女性オーナーに頼まれて、宿泊していたポアロ(ピーター・ユスティノフ)が事件の謎を解明するぞ。
さあ、死亡推定時刻にみなさんはどこにいましたか?
容疑者は、ひと組の父娘、二組の夫婦、アリーナの暴露記事を書いたジャーナリスト、それにホテル・オーナー。
人間関係が錯綜しているのだが、見せ方が上手いので、観ている側は混乱することもない。
ポアロがひとりひとりにあたって証言を集めていく。ここが面白い。
ほほう、絵を描いていた奥さんがそのときに時間を尋ねたのですね。何時でした?
ああ、崖の上から手を振っているのが見えたのですね。それは正午の合図の大砲のどれぐらい前でした?
おや、読書している彼の姿が窓から見えていたのですか、それはそれは。
各自の証言をつなぎ合わせると、なんと容疑者全員にアリバイが成立してしまうのだ。
どうする、ポアロ・・・。
(もちろん、クリスティのことなので、列車のアレと同じトリックを使うなんてことはしませんよ。)
・・・誰かが犯人に騙されて決定的な思い込みをしているのです。
ほら、こういうことですよ。
犯人はあなたですね。
冒頭で、イギリスの荒地で婦人の死体が発見された事件を映していた。
これがどう関係するのかと思っていた(正直、途中までそんな事件のことは忘れていた 汗)。
最後にきちんと犯人に結びついてくる。
ポアロの茶色い脳細胞、恐るべし。
好い出来の映画だった。大満足(2回目の鑑賞だけれど)。
最近はケネス・プラナーが監督兼主演でクリスティものをリメイクしている。
しかし、この「地中海殺人事件」はよほど新しい視点を付け加えないと、リメイクしてもオリジナルにかなわないのではないかな。