2004年 フランス 75分
監督:パトリス・ルコント
映像詩。 ★★★
この映画を観る際に知っておくべきことは、この映画にはいわゆる物語はありません、ということ。
映画の内容は映像と音楽のみなのだ。その75分間。
監督は「仕立て屋の恋」や「髪結いの亭主」で、どこか尋常ではない恋物語をうたいあげるパトリス・ルコント。
ルコント監督が、エティエンヌ・ペルション作曲の「ドゴラ」をバックに、カンボジアの様々な日常風景をカメラに収めている。
ただそれだけの、異色の映画。
役者は出てこない、したがって台詞もない。
それどころか、映像の解説のようなナレーションも入らない。
曲「ドゴラ」に惹かれていたルコント監督は、実弟が暮らすカンボジアを訪れてその地の圧倒的なパワーにも見せられたという。
そこで長い構想期間をかけて2つのお気に入りを融合させたとのこと。
どの映像も写真として切り取ってもいいくらいにきれい。
たとえばこの映像を少し気取ったカフェや、カウンターだけのショットバーなどで流したら、とてもお洒落だろう。
(音楽は音量を絞らざるを得ないか・・・)
そんな雰囲気の映像が淡々と映し出される。
大きな川縁の道を行く人を、(おそらく)舟の上から並行して進みながら捉えた映像。
砂埃の喧噪の街で、4人も5人も相乗りしたたくさんのバイクが行き交う様を捉えた映像。
カンボジアのどこか懐かしくなるような大自然の映像。
確かに音楽と映像は心地よく、また感情を揺さぶるような高まりもある。
問題は、これを映画として楽しめるかどうか。
こんなものは映画じゃない、単にミュージックビデオじゃないか、という声が聞こえても不思議ではない。
さあ、貴方はどうだ?