あきりんの映画生活

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「ロスト・ボディ/消失」 (2020年) 不気味な会話劇、この女、何者?

2020年 スペイン 88分 
監督:キケ・マイヨー
出演:トマシュ・コット、 アシーナ・ストラテス

サイコ・サスペンスもの。 ★★★☆

 

ジェレミー(トマシュ・コット)は成功した建築家なのだが、20年前に愛した妻が行方不明になるという辛い過去を抱えていた。
そんな彼がパリでの講演を終えて帰国するために空港に向かう。
道路渋滞の中、途中でタクシーが拾えずに雨に濡れている若い女性を同乗させてやることに。
結局二人は飛行機に乗り遅れ、ラウンジで再会することになる。

 

とこういった始まり。
派手なメイクの彼女テセル(アシーナ・ストラテス)は、親しげにジェレミーに話しかけてくる。
無分別なのか、計算高いのか、人の気持ちをもてあそぶようにして、彼女はジェレミーにつきまとう。
はっきり断れば良いのに、ジェレミーもどうしてこんなつきまとい女の話を聞いてあげているんだと、観ている者もいらいらしてくる。

 

やがてテセルは自分の身の上話を始めてしまう。
不幸な子ども時代の話、家を出て一人でパリに出てきた話、そしてモンマルトルの墓地で出会った年上の女性に一方的な恋をしてストーカーになった話。

 

もう聞きたくないような内容の話ばかり。
しかしテセルは巧みに話を盛り上げる。油断したくなるような軽い態度と重い言葉を巧みに織り交ぜる。
ジェレミーもついつい話に引き込まれてしまう。観ている者もつい映画に引き込まれる(笑)。
おいおい、この女、ヤバいんじゃないかい。

 

この映画、なにかおかしいなと思わせる展開である。
主人公はこんなうざい女にどうしてつきあうのだと思ってしまうのだが、最後まで観れば、ああ、そういうことだったのかと納得。

 

テセルの話は、なんと、ストーキングをしていた女性を殺してしまうところにまでいく。
えっ、ここからはラストまでは怒涛の展開となる。
これまで伏せられていた秘密が露わになっていく。おお、そうだったのか、そういうことだったのか。

 

それにしてもこの邦画タイトルは酷い!のひとこと。
スペイン語のタイトルは判らないが、英語タイトルは、「完全な敵」。
まあ、そんなところだろうね。この酷い邦題では観る人が減ったのではないかな。

 

テセルが恋した女性の部屋に押しかけ彼女を殺してしまうのだが、その場面・・・。
えっ、その部屋には殺された彼女がジェレミーと仲良く並んだ写真が飾ってあるぞ。
ということは・・・、テセルが殺したという女性というのは・・・、行方不明になったジェレミーの奥さん・・・?

 

(以下、完全ネタバレ)

 

まさか「ファイト・クラブ」ネタとは思わなかった。
しかし、好くできていた。テセルの話しぶり、態度の豹変ぶりが巧みだったな。
そしてジェレミーがつきまとってくるテセルを振り払わなかったわけも分かるよな。そりゃ、そういうことならそうだよな。

 

まったく期待せずに観た映画でしたが、思わぬ拾いものでした。