あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「柔らかい肌」 (1963年) 二兎を追う者は一兎も得ず

1963年 フランス 118分 
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:ジャン・ドイザー、 フランソワーズ・ドレルアック

浮気男の悲(喜)劇。 ★★★

 

トリュフォー監督は、文芸色の強いものから軽妙なサスペンス・タッチのものまで気の向くままに映画を撮ったような印象がある。
本作は、新聞の三面記事に載っていた実際の事件に想を得たとのこと。
なんにでも興味を持ってしまうんだね。

 

著名な文芸評論家ラシュネー(ジャン・ドザイー)は、講演のためにリスボン行の飛行機に乗る。
その機内でスチュワーデスのニコル(フランソワーズ・ドルレアック)を見初める。
で、ラシュネーは同じホテルに泊まっていたニコルにアタックし、ついには男女の仲となる。

 

ラシュネーはその世界では著名人。著書も沢山あり、顔も世間に知られているような人物。
(ニコルも始めに飛行機内で彼を見かけてすぐに判ったとのことだった)
そんな彼が、さあ、それからというもの、気もそぞろ。
家族といても、友人たちと歓談していても、考えているのはニコルとの逢瀬のことばかり。妻に嘘をついて外出をしてニコルと愛し合う。
いいのかなあ、取り返しがつかなくなるんじゃないの?

 

そりゃたしかに、ニコルに扮したドレルアックの美しさは並ではない。
妹のカトリーヌ・ドヌーヴと共に世界最高の美しい姉妹と言われていたのも宜なるかな
残念なことに、彼女はこの映画の2年後に自動車事故で亡くなってしまった。25歳。惜しい女優さんだった。
ドヌーヴは今でも貫禄充分に活躍しているのに・・・。

 

トリュフォー監督は”足フェチ”で有名だが、この映画でもその性癖は見て取れる。
冒頭近く、ラシュネーは床近くまであるカーテンの向こうで靴をはきかえるニコルの足をじっと見ている。
足首だけがカーテンの下から見えているのだが、この足首でラシュネーはニコルに恋したのではないkと思えるほどに、この場面は艶っぽかった。
また寝入ってしまったニコルのふくらはぎから太股をラシュネーが愛撫する場面もあった。

 

さて。
ラシュネーはどうでもいいような地方講演まで引き受ける。よし、これでニコルと過ごす田舎旅行ができるぞ。
浮気男の考えそうなことだよな。
しかしそんな企みが上手くいくはずもないのだよ。ここから本格的な悲喜劇となる。

 

講演会を企画したお歴々や友人たちは、やれ歓迎会だ、夕食会だと、ラシュネーを自由にしてくれない。
焦りまくるラシュネー。私はこのまますぐにパリへ帰りますから。まあまあ好いじゃありませんか、ゆっくりなさってくださいよ。
せっかく旅行に付いてきたのに放って置かれるニコルは怒り出す。私は何のために付いてきたの?
そりゃそうだよな。ますます焦りまくるラシュネー。どうする?

 

友人たちを強引に振り切って、やっとニコルとの楽しい時間を持つことができたラシュネー。
さあ写真を撮るよ。こちらを向いてごらん。二人で一緒の写真も撮ろう。
おやおや、調子に乗って写真みたいな証拠を残してしまっていいのかな。
そうだ、妻に電話もしておかなくては・・・。予定が伸びて今夜はこちらに泊まるよ。
これで良し・・・。本当?

 

(以下、後半のネタバレ)

 

充分に楽しんで帰宅したラシュネーに妻が言う、お友達に電話したら、貴方は昨日パリへ帰ると言ってすぐにいなくなったと言っていたわ。どういうこと?
さあ、このへんが男のずるいところなのだが(男の単純なところなのだが)、いいもんね、俺にはニコルがいるもんね。
妻との別居生活になったラシュネーは、ニコルと一緒に暮らそうと早速新居物件を探す。

 

どうだい、好い部屋だろう、見晴らしもいいぞ。
・・・私、貴方とは結婚しないわよ、さようなら。
えっ?!

 

女心はややこしい。(単純な)男にはわかりにくい屈折したものがある。
さあ、またまた男のずるいところ、それじゃ、何とかして妻とやり直そう。
しかし、あのニコルとの写真を見てしまった妻は怒り心頭。コートの下に猟銃を隠し持ってラシュネーのいるカフェに向かうのだよ。

 

ラスト、冷ややかな表情の妻が微かにほほえむ。
これが怖ろしい一瞬。しかし、すべては男の愚かなおこないが招いたことだったのだよ。
人ごととは思わずに自戒しましょうね、男性諸君。