1972年 フランス 98分
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:ベルナデット・ラフォン
悪女物語。 ★★★
トリュフォー監督は女性に振り回される男性を軽妙洒脱に描くのが上手い。
この映画も一人の悪女をめぐる(ちょっと情けない)男たちの物語。
社会主義学者のスタニスラフは、殺人罪で収監中のカミーユ(ベルナデット・ラフォン)に興味を覚えて面談を求める。
映画は、そのカミーユが語るこれまでの男遍歴。スタニスラフはその話に惹き込まれていく。
映画を観ている我々も、彼と一緒にカミーユの話に惹き込まれていく。
未だ若かった頃に、カミーユは折檻ばかりする父が納屋の2階に上がっている時に梯子を外してしまう。
父は転落して死んでしまう。これ、カミーユに未必の殺意があった?
感化院に収監された彼女はそこから脱走する。
こんなところにいつまでも閉じ込められている私じゃないわよ。好きなことをするわよ。
で、町工場の不良息子をたらしこんで結婚したかと思うと、その母の隠し財産を持ち出して逃亡の旅を続ける。
そのあとも、豪放なクラブ歌手と懇ろになったり、事故に遭った夫のために雇った弁護士ともいちゃいちゃ。
極めつけに、たまたま出会った善良この上ない害虫駆除屋を手玉に取る。
30歳過ぎても童貞の彼には作り話の身上話をして同情させる。
そして、可哀想にと幾度となく彼が差しだしてくれるお金をちゃっかりともらい続ける。
とにかく、カミーユ役のベルナデット・ラフォンが好い。
トリュフォー監督の短いけれども鮮烈だった「あこがれ」で、颯爽と自転車に乗って少年たちを魅了した、あのお姉さんである。
この映画では、あっけらかんとした行動力、意図しているのか天然なのか判らないような性的魅力、それを駆使して人生を生き抜いていく。
身の上話を聞き続けてきたスタニスラフも、いつしかカミーユの虜になってしまう。
そして彼女の殺人容疑が晴れて、めでたくカミーユは自由の身となるのだが・・・。
と思ったら、おまけの殺人事件が起きるのだ(可哀相な被害者はあの男だよ)。
そしてカミーユはまんまとその罪をスタニスラフになすりつけ、自分は長年の夢だった歌手になって華やかな世界に去っていく。
ハリウッド映画にはない小洒落た雰囲気が満ちている。
そして描かれるこの四つ股かける悪女ぶりは拍手もの。
そうなのだ、このカミーユという女性、明らかに悪女なのだが、なにか魅力的。
女性のもつ自分勝手さや小狡さ、あざとさを駆使して(?)男たちを手玉にとる。
映画ではその犠牲となる男たちを徹底的に戯画化して笑いを誘っている。
トリュフォー監督、どこまでも女性礼賛者なのだな。