2023年 アメリカ 104分
監督:ウェス・アンダーソン
出演:ジェイソン・シュワルツマン、 スカーレット・ヨハンソン、 トム・ハンクス、
エドワード・ノートン、 ティルダ・スゥイントン
大人のお伽噺。 ★★★★
舞台は1955年のアメリカ南西部の砂漠の街アステロイド・シティ。
この街は隕石落下で出来た巨大クレーターが観光名所となっている。
そしてここでおこなわれるジュニアの科学賞の受賞式に出席する5人の少年少女と、その家族がやってくる。
画面は淡いパステルカラーで彩られ、その色合い、お洒落な画面構図で、すぐにウェス・アンダーソンの映画だと判る。
彼でなければ絶対に撮れない作品、他の人は撮ろうともしないような作品。
集まってきた家族の中には、母親を亡くしたばかりの子ども達を連れた父親(ジェイソン・シュワルツマン)がいる。
子ども達は母親の遺灰をこの街の道に埋めようとする。
困った彼は義父(トム・ハンクス)に電話をする。義父もこの街にやって来る。
悩み事も深刻なのだか、たわいもないのか、捉えどころがない。
映画スターのシングルマザー(スカーレット・ヨハンソン)もいる。
(スカ・ヨハの娘なのに、まったく可愛くない 汗)
シュワルツマンとスカ・ヨハのコテージの窓が向かい合っていて、窓越しに幾度となく二人は会話をする。
額縁に納められたようなその構図が大変にお洒落である。
スカーレット・ヨハンソンが実に好い味を出している。
イメージとしてはマリリン・モンローとのこと。なるほど。でもスカ・ヨハその人の魅力になっていたぞ。
さらにこの映画、実は上記のような設定の劇を作っている、という設定なのだ。
モノクロ画面でその劇を作っていく様がところどころではさみこまれる。
つまり、描かれているのは作り物の世界なのですよ、と何度も念を押されるわけだ。
劇作家にエドワード・ノートン、劇の演出家にエイドリアン・ブロディ、演技講師にウィレム・デフォー。
まあ、ちょっとしか登場しない役にまですごい役者をそろえている。
ちなみに、このポスターに並ぶ出演者の名前を見て欲しい。
えっ、こんな人まで出ているの!?
超豪華メンバーである。マーゴット・ロビーなんてどこに出ていたんだ? 今になってもまだ判らないぞ。
さて。カラー画面の方は・・・。
いよいよ授賞式が始まる。とそのとき、なんとUFOがやって来て、中から宇宙人が現れるのだ。えっ!?
宇宙人は式場に置いてあった隕石の欠片を奪い去っていく・・・。
ありゃありゃ。人々は大混乱。街は封鎖され、軍は宇宙人到来の事実を隠蔽しようとする。
閉じこめられた人々は、勝手気ままにときを過ごす。
大事件が起きているのに、映画自体の雰囲気は至極のんびりなのだ。
もう一度宇宙人がやって来て、持って行った隕石の欠片をポイと投げ捨てていく。
こんなもの、要らねえよ、という感じ。
この宇宙人の造形というのも、わざとステロタイプっぽいのだ。
やがて事件はうやむやに終わっていき(何が問題で、何が問題でなかったのか、も判らないままだ)、人々はアステロイド・シティから去って行く。
お祭りが終わったあとの遊園地のような、華やかさのあとの空しさも感じられる。
意味をこじつけようと思えば、それこそ観た人の数だけできてしまう感じ。
それだけ懐が深いというか、決めつけが少ないというか・・・。
観る人を選びますが、とても感性を刺激してくれる映画です。