あきりんの映画生活

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「沈黙の艦隊」 (2023年) これは通常弾頭にあらず

2023年 113分 日本 
監督:吉野耕平
出演:大沢たかお、 玉木宏

潜水艦もの。 ★★★

 

原作はかわぐちかいじの潜水艦ものコミックで、「三国志」、「銀河英雄伝説」と並ぶ私の三大お気に入りコミックの一つである。
なので、この映画は観ようか止めておこうか、かなり迷った。
原作が好きな分だけ、裏切られると嫌だな、という気持ちが強かった。
しかし観終わっての結論から言えば、映画として満足のいくものだった。

 

事故で死んだように偽装された海江田(大沢たかお)は、アメリカ第七艦隊所属の原子力潜水艦シーバットの艦長となる。
日本とアメリカの両政府の秘かな合意の元に、その艦には死んだとされた自衛隊隊員70余名が乗りこんでいたのだった。
それは、憲法上の縛りから原潜を持つことができない日本政府の苦肉の策だったのだ。

 

しかし、海江田はシ-バットをアメリカの管理下から解放させてしまうのである。
しかもシーバットは核ミサイルを搭載している可能性があるのだ。
アメリカは激怒し、日本政府は途惑う。
海江田の狙いは何なのか?

 

海江田役を大沢たかおが演じると知った時は、少しイメージが違うなと思った。
海江田にはもっと線の細い、それでいてカミソリ的な切れ味の雰囲気の人を想像していたのだ。
しかし、大沢たかおは好かった。静かに微笑むところなどはふてぶてしさを感じさせていた。
見事に、童(わらべ)信に目をかけていた大将軍(「キングダム」ね)から独立国大和の元首へと変貌していた。

 

本作は日本の防衛問題を取り上げている。
アメリカの核の傘の下に居るかぎり、日本は真の独立国家ではないのではないか、という問題意識である。
かわぐちかいじのコミック「空母いぶき」では、日本はどこまで本気で中国と武力闘争ができるのかといった、同様の問題意識が問われていた。

 

シーバットがアメリカ軍に向かってミサイルを発射する際に警告する場面がある。いわく、「これは通常弾頭にあらず」。
ブラフだと見やぶられてしまえば、これ以後の警告はまったく無意味になってしまう。
しかし、本当に核弾頭ミサイルを撃つことができるのか?
この場面は緊張感が高まっていて、どうなるのだろうと固唾を呑んでいた。

 

映画は原潜シーバットが「大和」と艦名を改め、独立国家宣言をしたあたりで終わっていた。
原作の1/3もいってはいないのではないだろうか。
ぜひとも続編、続々編と作ってもらいたい。

 

アメリカ第七艦隊をピンガーで”全滅”させるところや、爆雷の衝撃を避けるために全速で海面から跳び出すところを、映像で見せてもらいたいものだ。