2023年 アメリカ 133分
監督:ギャレス・エドワーズ
出演:ジョン・デビッド・ワシントン、 マデリン・ユナ・ボイルズ、 ジェンマ・チャン
近未来SFもの。 ★★★☆
2075年、人間を守るために開発されたはずのAIが、ロサンゼルスで核爆発を引き起こした。
なに、AIが人間に反旗を翻した? AIが人間の敵となったのか?
AIを人類の敵だとみなしたアメリカはAIの根絶をはかり、AIとの激しい戦いを繰り広げる。
その一方でニューアジア地域ではAIとの共生を目指している。
世界中でAIに対しての思惑が錯綜している。
物語は、人類 vs AI の近未来の戦争である。
アメリカ軍の元特殊部隊のジョシュア(ジョン・デビッド・ワシントン)は、AIの知能の元締めであるクリエイターを滅ぼす任務に就く。
クリエイターを倒せば、AI軍に打ち勝てるぞ。
ジョシュアはクリエイターが潜伏しているというニューアジアに向かう。
主演のジョン・デビッド・ワシントンは、デンゼル・ワシントンの息子。
クリストファー・ノーラン監督の「テネット」でも主役だったが、父親譲りのしっかりとした演技で、これからも活躍が期待されるな。
(なんだったら、「イコライザー」を引き継ぐ?)
それはさておき。
映画の舞台はおもに東南アジア。その地でのアメリカ精鋭部隊とAI軍の戦い。
映像は洗練されていて、これは大画面、大音響で観る方がぜったいに満足できるといったものになっていた。
音楽はこういった大きなテーマのSFアクション映画では鉄板のハンス・ジマー。
重厚な音楽が映画館いっぱいに鳴り響き、美しくも激しい映像にはよく合っていた。
造形で感心したのは、ノマドと呼ばれるAI軍の空中要塞。
上空をゆっくりと移動しながら地上の敵軍をビームのような武器で殲滅していく。
禍々しいのだが、どこか優美さも感じさせる造形となっていた。
さて。
ジョシュアがクリエイターの居場所へ踏み込むと、そこにいたのは幼い少女の姿をした進化型AIのアルフィーだった。
しかし、ジョシュアはアルフィーを壊すことをしないのだ。それどころか、アルフィーを守り抜こうとするのだ。
どうして?
今作のAI達は飲食もすれば睡眠もとる。顔面の後ろ半分に機械部分を見せてはいるのだが、とても人間らしい。
こうなってくると、共存を求めているのは人間なのかかAIなのか、敵対心を抱いているのはどちらなのだ、ということになってくる。
さらにつきつめると、心に優しさをより持っているのはどちらなのだ、というところまでいってしまう。
この映画の主題は、AIは人間の敵なのか、それとも関係の持ち方によっては味方でありうるのか、というところにあった。
私達の身のまわりをみても、ChatGPTに端的にあらわされるようなAIの進化はめざましい。
そこには希望があるわけだが、その一方で加速度的な進化に対する不安もある。
そんな情勢を突き詰めた時の人類とAIの関係はどうなるのか。
その関係を対立の構図で捉えずに、共存という構図で考えようとすることは出来ないのか。
目を見張るような映像と共に、そんなことを考えさせる作品だった。