あきりんの映画生活

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「ペーパー・ムーン」 (1973年) まだ200ドルの貸しが残っているわ

1973年 102分 アメリカ 
監督:ピーター・ボグダノビッチ
出演:ライアン・オニール、 テイタム・オニール

ほのぼのロード・ムービー。 ★★★☆

 

亡くなったライアン・オニールを偲んで鑑賞。
娘のテイタム・オニールと共演したほのぼのロード・ムービーである。

 

舞台は1930年代のアメリカ中西部。
巧みな話術でインチキ話をでっち上げて聖書を売りつけている小物詐欺師のモーゼ(ライアン・オニール)。
ひょんなことから彼は、交通事故で亡くなった知人女性の娘アディ(テイタム・オニール)を遠くの伯母さんの家まで送り届けることになる。

 

面倒くさいなあ。なんで俺がこんな小娘の面倒を見なくてはならないんだ・・・。
嫌々なのだが断り切れないことから判るように、モーゼは根は善人で親切な男。
モーゼは、アディの母親の交通事故死をネタに200ドルを手に入れたのだが、アディはそれは私のものだから返せと迫る。
うん、少しずつ返すよ。

 

そのアディは男の子のような格好で仏頂面。ちっとも可愛げがない。
これを演技でしているのだったら、やはりたいしたもの。
この仏頂面アディが次第に可愛く見えてくるところがこの映画の好いところ。

 

アディはこまっしゃくれたところもあって、頭の回転も速い。
モーゼのちゃちな詐欺行為を巧みに手助けするようになる(モーゼより利口なんじゃね?)。
ね、大人を手玉にとる無邪気さと大胆さが同居していて、アディが可愛く見えてきたでしょ。
よし、次の騙しの段取りはこうだ、上手くやろうぜ。
こうして二人はたわいのない詐欺をしながら、伯母さんの家に向かう。

 

親密になってきた二人だが、アディは、モーゼに自分の父親ではないかとしきりに問い詰める。
モーゼは、いや、違うよ、私は君の父親ではないよと否定する。
アディは食い下がる、でも、顎の形が似ているよ、あなたは私のお父さんでしょ。
実の父娘が演じていることを観客は知っているだけに、このやりとりは面白いものだった。

 

タイトルの「ペーパームーン」をそのまま約せば、紙で作った張りぼての月ということになる。
アメリカではこの紙の月の上に座って記念写真を撮ることが流行したことがあるとのこと。
そこから転じてペーパームーンには”にせ物”とか、”はかないもの”という意味があるようだ。
この映画の父娘が、いわば”ペイパー・ムーン”であったわけだ。

 

道中で知り合ったダンサーの色仕掛けにころりとやられてしまったモーゼ。
車のアディの席に割り込んできたそのダンサーを、アディは一計をめぐらせて追い払ってしまう。
やるねえ。

 

また密造酒をネタに大もうけしようとした二人だったが、その詐欺がバレて逃げまくる羽目に。
結構ドタバタとした逃走劇もあって、どうなるんだ、この二人?

 

(以下、最後の場面のネタバレ)

 

なにやかやの果てに、なんとか伯母さんの家にアディを送り届けたモーゼは、じゃあなと車を出す。
そのときにアディがくれた写真に気づく。それは遊園地で撮ったもので、彼女が張りぼての月に座っていた。
思わず車を停めてしまうモーゼ。
すると、バックミラーには必死にこちらへ向かって走ってくるアディの姿があったのだ。

 

ここで好かったのは、伯母さんはアディを歓待してくれていたこと。
邪険にされて嫌になったのではなくて、歓待されたのにその上でなお、アディはモーゼと一緒に行くことを選んだのだ。

 

モーゼは、愛とは決して後悔しないこと、とは言わなかっただろうが、よかったね。
当時9歳だったテイタム・オニールは、史上最年少でアカデミー賞助演女優賞をとっています(主演女優賞でもよかったのでは・・・?)。